2024年12月23日月曜日

12月書評の6

◼️遊歩新夢「星になりたかった君と」

展開は、ラノベ風。でも星好きにはとてもエキサイティングな本だった。令和小説大賞。

自分でも単純なほうかと思う。たとえ予定調和でも、テレビドラマや物語には乗せられて泣いてしまう。先日ドラマ「宙わたる教室」の最終回でもぐすぐす涙した。

書評で知った本。ストーリーは分かっていたけど、それ以上に、超新星や小惑星発見の専門的な知識に引き込まれた。いやエキサイティングだった。

鷲上秀星と琴坂那沙。2人は七夕星祭りの夜に出会う。秀星は理学部で宇宙物理学を専攻する大学生。祖父が造った天文台の管理を任されていた。前年の祖父の死、騒ぎに紛れてその日に発見した超新星の一報を不正に奪われたショックで、秀星の気持ちはずっと沈んでいた。屈託のない那沙との触れ合いに、少しずつ心をほぐされていく秀星。しかし「星になりたい」という那沙は深刻な病に侵されていたー。

七夕、鷲と琴にNASA。あからさまな悪役と暖かい周囲、悲しみと並行してドラスティックに続く新天体発見と実証と命名権をめぐる鳴動。織り込まれる専門的な知識と経験の蓄積。著者は「天文家」だそうだ。これは相当ヘビーな方かと思う。ダモクレス族なんてちょっとヤバすぎる。

コメットハンター、新天体発見者、という言葉は宇宙好きならよく聞く。実態がほの見える部分もまた心をざわつかせる。宇宙のロマンは果てしない。去年シンポジウムを傍聴に行くとチョー満席。老いも若きも男女も関係なく皆の目はトウィンクル。ノらなきゃ嘘だろう、と感じる。

関西が舞台なのも好感。日本有数の暗さとなる奈良と和歌山の間の護摩壇山の道の駅、聞いてはいた。ますます行きたくなる。天文台、いいなー。

考えてみれば、今年は宇宙シンポジウムに行って、夏はペルセウス座流星群ピークの日に天文台併設の施設で乱れ飛ぶシューティングスターを観て、紫金山・アトラス彗星を追いかけなんとかスマホで撮影して、宙わたる教室を観て、と星に囲まれた1年だった。締めくくるふたご座流星群はきょうあすピークだけども、空には雲。どうか晴れますように。

宇宙の鼓動を、聴きたい。エキサイティングな作品だった。満足。

0 件のコメント:

コメントを投稿