2024年12月23日月曜日

12月書評の11

◼️ 泉鏡花「月夜車」

月夜の彷徨い、人の情。またむつかしいのを選んでしまった笑

泉鏡花の短い作品を半ば当てずっぽうに読むのがひとつの趣味化している。前回はちと気持ち悪かった蛇もの。今回は小粋なタイトルだが、正直よく分からなかった。

亡き母親の13回忌に帰省した、東京の大学の国文科を卒業した青年は、法要後の宴会を抜け出すべく山中で道を逸れるよう人力車夫に告げる。止まったそこへ別の車夫が寄ってくる。それは幼少の頃家に出入りしていた友造だった。

青年の父親を騙して、融通してくれたお金で放蕩するなど恩を仇で返したこと、苦労した青年の母はしかし、遊郭の女たちに読書やお茶、お花を教える紅女場の師匠をしていて、いまだ追悼する女たちが多いことなどを懐かしむ2人。

そのうち青年は婦人と待ち合わせていることを思い出し、場を終わりにしようとするが友蔵は何くれと世話を焼き続ける・・

梟聲が、月の空をホツオーホと走って、おしまい。

宴会場から山の闇へ漏れる光を想像させる。そこへ生まれた、偶然の再会は決してきれいではないが人間くさいものを思わせる。友造に親身だった父親、清廉に生きた母親、もはやあまり帰らないだろう故郷での過去の軽いしがらみは意外にしつこい。あふれる遊女、おそらくはもと遊女は詳しく描写されてはいないが闇の月光の山中に色を添えているようにも思える。

・・と文章からさまざまなイメージは湧くが、これか、という煌めきはないまま終わったかなと。解説できる方いましたら願います。

0 件のコメント:

コメントを投稿