◼️反田恭平「終止符のない人生」
注目のピアニスト反田恭平。熱い、熱いぞ語りがヒートアップ!
もう来年はショパン国際コンクールだ。前回はコロナで1年延期され2021年に開催された。小林愛実、角野隼斗、そしてその時点ですでにコンサートチケットが取れないほどの人気となっていた反田恭平が出場し大いに盛り上がった。世界的ピアニスト内田光子以来51年ぶりの2位となったことはまだ記憶に新しい。
若くして認められたピアニストからは、天才、おそらく裕福、音楽一家など恵まれた環境、という雰囲気を感じてしまう。しかし、反田恭平の生い立ちは決してその公式に当てはまっていない。
名門の桐朋音楽大学に特待生入学、日本音楽コンクール1位とその才は順調に発揮される。しかして音楽を続けるために父に土下座、コンサートで必死にモスクワへの留学費用を稼ぐため、帰国して出席日数を気にしつつ、厳しい環境でのレッスンと、読んでみて意外だった。さらにポーランドのワルシャワ音楽院で憧れの先生につくためSNSで売り込みをかけるなど、積極的にトライを続けている。
ショパンコンクールでの軌跡は、web記事や動画、テレビ番組で見た情報が懐かしく、何より日本からYouTube生配信に聴き入った音を思い出した。そんな心理状態だったのか、と認識を新たにもした。
この本でおお、と思うのは、そのビジネス的な考え方と熱さ。反田恭平はジャパン・ナショナル・オーケストラの社長でもある。
コロナ禍でいちはやく演奏の有料配信を実行したことを皮切りにさまざまな取り組みをしている。他の業界ではできているのに、クラシック界ではDX化が遅れていることを強調し、国の文化政策にも言及、さらに企画としてもあれもやりたい、これもやりたい、とそのアイディアと意欲は止まるところを知らない。熱い、熱すぎる。
なんというか、生きることに、気合いが入っていて、義理を重んじること、全てのコンサートに手を抜かないと、信念に揺らぎがない。すごい勢いの本になっている。
反田恭平はショパンコンクールの翌年、ファイナルで弾いたショパンピアノ協奏曲を聴きにコンサートへ行った。また行きたい。ジャパン・ナショナル・オーケストラが奈良に拠点を置いているのは関西在住として好感を覚えるし興味がある。やや遠いので土日のマチネの開始時間を少し早くしてくれると嬉しい、なんて言ったりして。
前回のショパンコンクールでは毎日毎晩ずっと聴いて日本人を応援していた。多くのコンテスタントが繰り返し同じ曲を弾くため、ショパンの理解が進んだし、コンクールだからこその緊張感、独特の雰囲気の中の強い輝き、失敗の種類など、刹那的な事象を感じ取れたと思う。いくつか、鳥肌が立つような場面が確かにあった。
反田恭平の妻となった4位小林愛実のセカンドステージはピアニッシシモを多用するそのピアニズムが際立っていて戦慄すら覚えたし、3位でコンチェルト賞を取ったマルティン・ガルシア・ガルシアのファイナル、協奏曲の2番、その演奏のドラマ性と緊張感に興奮した。
反田の演奏はゴージャスで、安定感があってミスをしない、音がばらけず、心地よいまとまりがあった印象。次にコンサートに行って、ショパン以外のピアノを聴く時、どう感じるのか楽しみだ。
もちろん来年のコンクールも日本人を応援して、できるだけたくさんの演奏を聴きたいと思ってます。
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