◼️ヘンリー・クーパーJr
「アポロ13号 奇跡の生還」
危機に陥った有人月探査船アポロ13号が地球へ帰還するまでの道のり。極限状況の静かな緊張感。迫る大気圏突入ー。
1970年、アポロ11号が初の有人月探査を成功させた翌年、同じくパイロットを乗せたアポロ13号は地球を飛び立った。順調と思われた航行に突然、事故が起きる。
酸素タンクが爆発し大きく破損、燃料電池が損なわれ、電力供給ラインも半減。本来は月に着陸し乗員が多くの岩石を採取して帰るはずだったのが緊急事態で月を周回しての地球帰還ミッションになった。想定していない、訓練していない、もちろん誰も経験していない事態に右往左往しながらもヒューストンにいる地上管制塔のスタッフたちは細分化された仕事をこなし、短い時間で議論を重ねる。宇宙空間で生命の危地に立たされたパイロットたちはー。
アポロ13号は大きく3つのパーツに分かれている。円柱に漏斗の先のようなメインロケットノズルの付いた支援船、支援船の上にあり高さのない三角錐の頂点を鈍角にしたような司令船、そして4本の脚を備えた月着陸船。
司令船だけが地球の大洋に着水、帰還する。爆発は支援船の側面で起こり、司令船の直下だったから最後まで司令船のシールドの破損が懸念されていた。酸素の漏出という、宇宙空間では考えたくもない事態に加え、帰還までの電力確保のため不要なスイッチは全て切られ、船内の温度は日本の冬くらいのひとケタ台、しかも深刻な水不足。クルーは寒さのためよく眠れず、加えて脱水症状寸前だった。
誘導、飛行力学、逆推進、電気系統・環境系統、計器および通信など、細分化された管制担当官たちの間で何度となく議論が起き、時間のない中マニュアルの作成がなされ、声で伝達される。目線がどちらかというと管制側で、「宇宙兄弟」を思い起こさせる。
残り少ない時間、かかっているのはいま通信で話している者たちの人命、描き方がひどく冷静に感じられたことが、極限状況の深刻さを物語っている気がする。
なぜ有人の宇宙探査でなければならないのか、という大きな問い。国際的な宇宙、惑星探査競争の時代から、コスパと相まって宇宙開発のスピードは鈍化した。そしていま有人月探査、月面基地建設、さらには有人火星探査の機運が高まっている。
昨今の事例を見ても、宇宙については万全ということはなかなかない、というかトラブルは多い。人命を賭すにはリスクを見逃さない慎重さが重要。その一方でキュリオシティなど火星探査ローバーの画像などを見ると、手触り、気候、重力、風景、夜の光景など詳しいことを知りたくなってやはりワクワクしてしまう。
SF的観点で見れば、人類の宇宙史はまだ始まったばかり、という気もする。未来はどうなるんだろう^_^
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