2025年7月26日土曜日

7月書評の10

◼️ ダグラス・アダムズ
 「銀河ヒッチハイク・ガイド」

ハチャメチャなSFコメディ。思い切って飛ぶ先行きにお笑いと文芸的期待をする。

もはや古典ともいえる1979年の作品で、シリーズもあるとのこと。いやー寡聞にして存じませんでした。ズバン、と展開が早い。

地元ラジオ局で働いている青年、アーサー・デントは友人で地球人に身をやつしているベテルギウス系惑星人のフォード・プリーフェクトに連れられ、地球から宇宙へと脱出する。還るべき地球はヴォゴン星人の手によりほとんど瞬時に消滅させられてしまったー。

最初、アーサーはバイパス道路建設のため、住んでいる家をブルドーザーで撤去しようとする役所に対抗して家の前に座り込む。役所曰く、計画書は9カ月も前から閲覧できるでしょ、とのことだった。ボォゴン星人もスケールの違いこそあれ同様のリクツで強弁する。で、容赦なく地球を消す。いやはやこれがギャグでなくてなんだろう。

ストーリー進行はまさにヒッチハイク。絶望と希望、偶然。間に挟まれるバカバカしくくすっと笑ってしまう展開。地球人アーサーとベテルギウス系惑星人のフォードはもと銀河帝国大統領のゼイフォードらとオリオン座の馬頭星雲の中を彷徨う。もうこうなると何が基準なのか分からなくなる。

イギリスものにして、関西の直接的なお笑いと、関東のシチュエーション的な笑いとをミックスさせたような、訳も大変そうだけれども、日本人にもよく分かりそうな、壮大なコメディ。危機感を盛り上げることもなく、すげなく地球をなくし、復活するのか?を絶妙な感じでチラつかせ、結局どこへ向かうのか、うまく全体をコントロールしている感がある。

海外のSFといえば世界共通にワクワク、ゾワゾワしたり、中間的哲学的な描き方が肌に合うこともあればちょっと敬遠かもと思ったりする。名作の一。こんなのもあるんだね。

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