◼️ 小泉喜美子「弁護側の証人」
視点、鮮やか。殺人事件と法廷。1963年のデビュー作品で、伝説の名作との銘。
その手際に感心する作品で、ここで匂わすコメントも興を失うのではと遠慮するタイプのもの。小泉喜美子は店で言えば隠れ家的な存在の名ミステリー作家と認識している。今回、後で様々なことは考えたけれども、なんにせよ中心となる構成が鮮やかだ。
ストリップダンサーのミミイ・ローイこと漣子(なみこ)は舞台を見て猛烈にアタックをかけてきた財閥の放蕩息子、杉彦と愛し合うようになり、出会って1か月で結婚した。親族たちが財産狙いかと疑惑の目を向ける中、杉彦の父であり財閥の長、龍之助が殺害される。犯人として逮捕されたのはー。
1963年は昭和38年。私の勝手なイメージだが、サスペンス的に興味を喚起するような設定やスーパーな人物の登場やセリフ、考え方などが昭和っぽい。もう1つ、がらっぱちなのか文芸的なのか、おちこちに興味を引く言い回しが散らしてある。これもこの時期の文人っぽい気がする。楽しく調べさせてもらった。
モノローグの主役は変化へんげ、3人称の章が挟まる。狙いはいかに。過去と現在に見えるものが繰り返しテンポよく現れて、物語がよく流れる。そして途中で、何がどうなっていたのか、とこれまでを見返す。
いいですね。なるほど。もちろんタイトルはアガサの「検察側の証人」へのオマージュだろう。読んだのが昔すぎて、筋は忘れてしまった。ちなみに自然と浮かぶメロディー&歌詞はさだまさしの「検察側の証人」という歌。これがまたこの小説にもマッチしている。
話の流れは先日カンヌの最高賞、アメリカアカデミー賞で作品賞など「ANORA」を思い出す。永遠のパターンということかなと。なかなか「プリティ・ウーマン」にはならない。
良い読書でした。葉桜(謎^_^)
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