2024年11月30日土曜日

11月書評の9

シュウエケ邸。2階バルコニー上部の装飾はムスリムを思わせる。瓦屋根は鯱しゃちほこ、石積に松、そして芝生と東洋と西洋の融合。イギリス人建築家アレクサンダー・ネルソン・ハンセルが自邸として1896年に造った。ハンセルは異人館街の他の建築や旧居留地のチャータードビル、同志社大学理化学館、平安女学院明治館などを手掛けている。ほとんど見たことがある。

2年続けて見たけども、ここは広いしゆっくりできる。庭でガイドさんの説明を受けた。イギリス人建築家とのことで、あの・・のタイミングでジョサイア・コンドル?と言葉を挟んだら、そう、建築関係の方?なにか間違ったら言ってくださいね、と警戒されたようだったので!いえいえ素人の建物好きです、と釈明した笑。キーマカレーやスイーツも販売されていた。秋の神戸散歩かねて建築祭、いいね😎

◼️ 山尾悠子「初夏ものがたり」

著者の初期連作短編集。ほの見えるような、書き分けであるような。

山尾悠子は本読みが好む傾向にある、もはや伝説的な作家さんかなと思う。私は「ラピスラズリ」「飛ぶ孔雀」しか読んでない。いやー巨大な幻想の世界を作り上げて、滅びをも描く、難解な作品。だけどスケール感や刹那的な表現やキレがあり、また手に取る気にさせるーたまにだけど。私としてはそんな評価かなと。

今回は1980年発表の連作短編を収録したものらしい。少女向けの雑誌掲載というだけあって、怪しいけれどストーリー性はそれなりにくっきりしている。

「オリーブ・トーマス」
「ワン・ペア」
「通夜の客」
「夏への一日」

の4篇。それぞれに爽やかで、信仰に沿ったカラーの挿絵が入っている。

連作の中心にいるのはミスタ・タキ。ダークスーツに身を包んだ若いのか年配なのかわからない日本人。どうやら霊界からの依頼をもとに、現世の人間とのつなぎ役をしているようだ。冷静で、穏やか。記憶を消す能力も有しているらしい。ホテルに泊まれば最大限に尊ばれた施しがなされ、車を手配すれば市長夫妻のリムジンを運転するはずだったドライバーが回される。

かくりよの依頼者とうつしよの人物とのマッチングのギャップ、結局ルールも壊そうとする成り行きなどが小説のおもしろさか。少し超幻想の法則の香りもする、だろうか。しかも後に行くほど多少複雑になるし。ぬるくて最初飲みやすく美味しいお茶が、慣れるに従い2杯め、3杯めと少しずつ熱くなる、という、どこかで聞いた話のようだ。

初期の短編を集めた文庫が出たと読んだ記憶はあった。予備知識もなかったし、正直もう少し・・ブッ飛んでるかと先入観を持っていたのでやっぱり物足りる、ということはなかったかな。ただ興味ある作家の足跡は興味深い。

妖しさと、意外に複雑な構成と解題。その構築の精巧さ、ところどころの表現の鋭さと、長野まゆみや梨木香歩に連なるような、なんというか自然的、日本語的な味わい。

小腹だけ満たした感じ。ガツっと幻想ものを読みたくなってきた。困ったものだ。難解でも突っ込んでしまう。本読みの宿命やね。

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