2024年11月28日木曜日

11月書評の8

◼️ 木住鷹人「危険球」

まっすぐはいいな、とホロリ。高校野球もの。先の京都文学賞最優秀賞。

関西に住んでいながらたまに美術館に行くくらいで、長い間京都シロートだった。コロナ前の年末に立て続けに京都案内することになって急遽勉強、そこから京都に興味が湧き、建築趣味も手伝って月に1度は通うように。地理や歴史が分かるにつれハマっていっている。

夏の甲子園をかけた京都大会決勝戦。0-0、緊迫した投手戦の7回、小暮東工の剛球投手、権田は境風学園のエース、仁科の頭にデッドボールをぶつけてしまう。仁科は昏倒、その直後、境風の野球部員でスタンドで応援していた仁科の親友、葉川は信じられない言葉を権田の口から聞いた。

「あんな球、避けられるでしょ」

球審鍋島は権田を危険球退場とした。その後新聞への投書をきっかけに権田はSNSでバッシングに晒され、決勝は勝ったものの甲子園でメンバーに入ることはなかった。

木暮東のキャプテンでキャッチャーの牛島、葉川、鍋島を軸に、それぞれの物語が動く。そして突破口がー。

「危険球」の前の回の最優秀賞「ビボう六」では二条城を印象的に描いていた。さすがというか当然というか、京都文学賞、京都の描き方が上手い。今回も京都市の北、金閣寺方面と南、伏見稲荷のある方向、京都駅近の東寺、西寺あたりを絡ませて対比させている。また真夏と秋から冬へ向かう季節、移り変わりの織り交ぜ方も染み入るように効果を上げていると思う。

たびたび行くようになって、やはり京都には京都の街並みと雰囲気がある。東山魁夷に京都を描くことを勧めた川端康成もそのような意味の事を言っていた気がする。たしか。

まっっすぐな話で最後思わずホロリと。表現の細部にも気を遣っているのがよく分かる。キャラ設定も分かりやすい。

実を言うと感動しながらやはり疑念が消えなかった。物語は通常あり得ないことでも描ける。ただ、年代関係なく、頭にぶつけたピッチャーがこのセリフを言うのはちょっと・・というもの。まあココロ動いたからいいか。またセリフが少しくどいきらいはあるかな。

やはり京都は特別だ、と思う。京都もしくは京都の大学出身の作家の著書は多い。歴史がありそうな通りの名前を入れただけでバリューが出るし、観光した人も多いであろうから東寺、衣笠、伏見、八坂神社という名前が出るとイメージが膨らむのではないかなと。京都に行くと、漂う雰囲気が違う。ちょっと京都に酔う、感覚?

爽やかな野球ものof Kyoto楽しみました。

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