◼️ 八木荘司「古代からの伝言 民族の雄飛」
神功皇后、応神天皇と積極果敢な半島政策が続く。段々と日本の位置付けが明確になる感覚。
この巻は西暦300年代から400年代、主に神功皇后から応神天皇、仁徳天皇を経て雄略天皇までの時代らおもに朝鮮半島での争いを中心に書かれている。
特に朝鮮半島との関連については、歴史教科書では任那が出てくるくらいで、突然白村江の戦いで敗れた、という事象にジャンプする感じで、どうも茫洋としてつかめないものがあった。この時代は非常に活発でエキサイティングだ。
神功皇后は神がかりで半島への出兵を命じ、新羅に攻め入り、臣従させる。皇后は臣たちの説得に耳を貸さず男装の麗人然とした装いで軍とともに行動する。
「敵が強くとも怖じてはなりませぬ、婦女を暴力で奸す(おかす)者をゆるしてはなりませぬ、みずから服しようとする敵を殺してはなりませぬ」と命じながら。
神功皇后の子、応神天皇もまた半島関与に積極的だった。百済に注視し、名君好太王の高句麗と新羅の連合軍と戦った。
国が隣接していれば、なんらかの紛争があり交流が深いと考えるのは自然だと思う。特にこの時代、外国といえば朝鮮と中華で、半島情勢は安全保障に直結すると強く思われていた。また貿易の利も大いにあった。だからこそ百済を中心として日本は積極的に関与した。
これは必然的に日本が軍事大国、強国であることを大陸に知らしめることとなり、個人的にはその後も時代が下っても意識はしばらく残っていたのではと思う。もちろん中華世界からは日本なんて辺境の地だという意識があったのかもしれないが。
これら軍事行動に躊躇しない天皇のもとで働いた武内宿禰(たけしうちのすくね)やその子の平群木兎(へぐりのつく)、抜群の外交手腕を発揮した千熊長彦らの仕事も、実務的かつ人間的で、時に強引な帝の指示に従って苦労し、時に夫婦仲のこじれた帝の相談役となり・・この時代、名前の響きも異様で面白く、しかし行い、仕事はあまり現代と変わらないかも、と思わず微笑する。
このように知識を得ると白村江の戦いもリアリティに富むものだ。三韓の行く末には日本も深く関わっていた。歴史を見る時に襲われる、独特のワクワク感。次の巻が楽しみだ。
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