2024年11月28日木曜日

11月書評の6

◼️ 東野圭吾「むかし僕が死んだ家」

小学生以前の記憶のない元カノと無人の別荘地で過ごす、捜索と推理の夜。芝居に向いた話かも。

高校から大学、かつて6年間付き合った元恋人の沙也加の頼みで大学の研究助手・中野は一緒に山中の別荘地にある無人の一軒家を訪ねる。沙也加の持っていた鍵で中に入った2人は、電気も水道も引かれておらず、時計は全て11時10分で止まっている不思議な別荘の捜索で様々なものを発見し、沙也加の記憶につながる事実を推定していくー。

なにも分からない状態から、閉鎖空間で2人だけで立ち回る。そしてだんだん過去を明らかにしていく2人劇。なぜこの家はあるのか、まで根源的に掘り下げる。

こういう展開になると先が読める気がするものだ。おおむね理由は予想がつく。ただ少しずつ判明していく過程はやはり読んでてスリルがあるもので、パラパラと読み終わった。

ドラマとしての形式は興味深いが、ネタを読んでしまった後としては、見えないものはやはり見えないなと。だからいいのかもしれないが、もう少し鮮明にする方法はあったのかもしれない。謎を何重かにしようと思ってひねったらやはり分かりにくくなる。見えにくくなる。そんな気がした。都合の良さもチラリと。

東野圭吾と仲の良い作家、黒川博行の解説からは作家としての東野圭吾の本音というか、リアルな姿の一部が垣間見えて興味深かった。東野圭吾は直木賞選考でも厳しい意見を厳しい言い方で表す人、というイメージで、今回読んで、やはり大変高度な能力を駆使している部分があるんだなと。

古い作品。まだスマホもケータイも出てこない。男女の妙も含めて懐かしく楽しめました。はい。

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