ううん、唸らせる短編集。伝えたい何かが心に落ちる。さすがだ。
西加奈子さんは、職場の後輩が好きで、よく貸してもらった。自分でも買って結構読んでいる。ここしばらく、久しぶりにいくつも読んだ。今回は短編集。
「燃やす」「いちご」「孫係」「あねご」「オーロラ」「マタニティ」「ドブロニク」「ドラゴン・スープレックス」の7篇。少女、女の子は女の子であるだけでふつうにしんどい、今回は女の子を描きたかったと巻末の対談で述べている通り、すべて女性が主人公。
コンサバなおばあちゃん、はすっぱなお母さんのもとで育った主人公が可愛さに目覚め、変質者に遭う「燃やす」、2話めはタイトルのごとく何より大事ないちごを育てる年配の男、モデルとして成功した娘は30歳を前にして、幼少の頃親しんだ彼に会いに祖父の田舎へ帰る。
そして、最も反響が大きかったという「孫係」。芯の言葉は伏せるが、仮面は悪いことではない、と改めての定義づけのようなものが響く。そうだよね、と思う。
酒好き、はっちゃけたキャラの女がキャバ嬢を天職と思う。しかし人間ぽいところも、という「あねご」、「オーロラ」はどこかテイストが違い不思議めな話。争奪戦に勝ち付き合った彼氏との間に子どもができ、悩みすぎる女の「マタニティ」。ここまでターニングポイントには厚く薄く男性が関わる。ふむ。
フィンランドのアキ・カウリスマキ監督が大好きな私は「ドブロニク」の主人公が羨ましかった。子ども、少年の頃プロレスの藤波辰巳をテレビで観ていた私は、タイトルの決め技をどうやってどこで絡ませるんだろうと期待して読み進めた最終話にも関西弁で、印象的な言葉が出てくる。
悪い言葉かもしれないが、腹黒い、というのは社会人なら持っていて当然の資質だと思える。誰だって計算はするし、それでも多くは正直に過ごしてると思う。自分らしさ、は意識しないでも出てくるものであまりこだわったことはない。ふと立ち止まる、けったくその悪いこともついてくる、不安になることもある、微妙な感情を、時には散らしたり、焦点を当てたり、女の子といいつつ、普遍性のある言葉が軸になっている気がする。
設定も突飛だったり、ふつうに裕福で才があったり、離婚が絡んだりと、常にどこかざわざわしたところがあって、親子から3世代、ついには4世代となかなか変化に富んでいて楽しい。日常であるような非日常という面白みもある。年配の女性にたしなめられてるような読み心地。
充実した短編集。さすが上手いなと。他の短編集あれば読みたいな、また。
0 件のコメント:
コメントを投稿