らしく不思議でそそる設定と、どこか民話を感じさせるオチ。
ショートショートではなくて、おおむね20ページくらいのコント集。表題作ほか11篇が収録されている。星新一らしく、昭和っぽいにおいのする不思議シチュエーション。この本は1985年に出て、私が手にしているのは2012年の版。平成でも、令和でも、気軽にスラスラ読めて、おもしろい。
夢で見た人や物が現実になって現れる。触れはしないものの誰にでも見え、夢見た人の後をついて回る。男が夢に見た美女、娘が夢で会った亡父、憧れの歌手、受験する学校の制服を着た自分、独裁者の研究者にはヒットラー・・
(重なった情景)
医者のところに、5年後から時間を遡っていて悩んでいる、という患者がやってくる。自分の人生を逆に辿っていて、定年退職になった会社に復帰したという。その男が極度に恐れていることがあった。それは・・
(まわれ右)
冒頭からどういう結末がつくのか楽しみになる設定だ。ナンセンスに絵面がにぎやか、バラエティに富みそうだったり、時間軸をさかしまにしてコミカルさを出していたり。
このへんがショートショートと短編の違いかとも思うけども、前者ならキレよく思えるオチでも、後者では理屈を求めたくなってしまう気がした。短い話は余韻・・ふむ、という感じだ。少し、んん、と考えてしまう、いつものようなエンドだった。スパン、と来ているけどもどこか民話っぽい、教訓のような物が含まれた寓話のような印象。
ただ、やや長の作品には、どこまでも掘れる、という物語の自由度がある。現象面をたくさん連ねられるので、考えられる場面を並べたり、キャラが多めになったり。それも面白味と言えばそうかもしれない。
やはり設定はワクワクするものでないと。投げかける謎はさすがに魅力的。さすがの星新一、またおりに触れ読もう。