バルト海に面した北の国。読んで字の如く、だけど、やっぱり梨木香歩さんしてます。
バルト三国、リトアニア、ラトビア、エストニア。ゴルバチョフが打ち出したペレストロイカのもと独立の機運が高まり1991年にソ連から独立を果たした。ちょうど学生時期で新聞によく載っていたので、なぜか南からの順番で覚えた。
今回の舞台は北の果て・・梨木香歩は最初は首都・タリンで昔の地下通路などを訪ねる。まさに紀行ものらしい。建物や人の機微を心中よく捉えている。
バルト三国最北の国、というのは知ってた。でもさすがになじみのない国、タリンではもう一つ想像しにくいな、と感じたが、北部、湾を隔ててスカンジナビア半島のフィンランドと向かい合っている首都タリンから、ずっと南東部のヴォルに移動して、ホテル近くの厚い森に1人入ったころに、ナチュラリスト・梨木香歩らしさが出た。
「じっとしていると、ときどき自分が人間であることから離れていくような気がする。人が森に在るときは、森もまた人に在る。(中略)何か、互いの浸食作用で互いの輪郭が、少し、ぼやけてくるような、そういう個と個の垣根がなくなり、重なるような一瞬がある」
茸取り名人のおばあさんの話を興味深く聞く。梨木香歩も相当の知識がある人で、その会話はけっこうディープ。茸は首都タリンの近くでもちょっと郊外に出れば取れるそうで、国民にはポピュラーな食材のようだ。アンズダケが食べてみたくなる。
西部キヒヌ島は男性たちが漁に行ってしまうため、家に残った妻たちはパンを焼き、魚を捕って焼き、畑を耕す。機織り機で作られた暖色系統の縦縞スカートが鮮やか。著者は女たちを「なんてかっこいいんだろう」と涙さえ浮かべながら感激している。
北西部の大きな島、ムフ島とサーレマー島訪問。サーレマー島はソ連時代、軍事拠点だったから、生態系がそのまま保たれているらしい。ムース一万頭、オオカミ、オオヤマネコ、クマ、カワウソなどがいると知り梨木氏は夢見心地。
「私はかなり本気で後半生をこの島で過ごすことを考えた」
んだとか。梨木香歩さん、めっちゃ植生に詳しいし、毎月、季節のゼリーを作っているらしい。渡り鳥の観察のために、自分で車を運転してウォッチしたり、空港でたぶん英語になっているであろうアフリカの本を購入し読む、という、理知的および科学的であり、かつ行動力がすばらしい。
エストニアの1か月前はカムチャツカ半島に行っており、この後はアフリカに行くんだとか。
様々な種類の、この作家特有の要素が散りばめてあり、そのまっすぐさに惹かれてしまう。感性がおもしろい。幽霊騒ぎもなかなか楽しいくだりでした。
梨木さんのエッセイ、GOOD、良い感触。折に触れもう少し読んでみようかな。
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