2026年3月1日日曜日

2月書評の11

◼️ 柳広司「シートン探偵記」

野生動物などにかかわる殺人事件。探偵役シートンのキャラが、ハマっている。続編熱望。

シートン動物記は実はたぶん断片的にしか読んでいない。この本と図書館で目が合ったとき、著者が夏目漱石のパロディ推理小説や「ジョーカー・ゲーム」シリーズを書いた柳広司氏と見て、これはきっと面白いに違いない。かつ、シートン動物記の話を再学習できるかも、と瞬時に期待が膨らみ即借りてきた。

「狼王ロボ」、カラスの王様「銀の星(シルバー・スポット)」、ハイイロリスの「旗尾(バナー・テイル)」ハイイログマの「熊王ジャック」の話などが収められている。なにか懐かしく思い出すものはある。

ニューメキシコ州サンタ・フェにある広大な"シートン王国"有名な「シートン動物記」の著者アーネスト・トンプソン・シートン氏のもとをロサンゼルス・タイムズの記者が訪れる。シートン氏の自叙伝の書評を書くにあたり、エピソードを拾おうという取材。そこで記者は、過去にシートン氏が解決した、オオカミにまつわる殺人事件の話を聞くことになるー(カランポーの悪魔)

ワトスンはこの記者で、ホームズがシートン。80歳にしてかくしゃく、溌剌としているシートンは落ち着いた、知的な口調で語る。野生動物への豊かで深い知識と観察力、経験に基づいた推理力が発揮される。

殺人や暴行、陰謀が絡むので、背景はやはり生臭い。しかし動物の習性をベースに置きながらユーモアを交え物語らしく仕上げている。ま、ちょっときれいにまとめているのでトリックは凝っていたり、特に動機があっさりしてたりという気もしたが、興味深く読めた。

シートンはホームズよろしく、観察の結果から記者が訪ねてくる前どこに立ち寄って何をしていたか、など当ててみせる。これはいいアクセントであり、洞察の深さを示す材料となっている。また密室牛小屋の暴行事件はホームズの「名馬シルヴァー・ブレイズ」を思い起こさせたりする。

実際のシートンと親交の深かったセオドア・ルーズベルト大統領も登場する。この関係性に関しては巻末の解説、補足で腹落ちする。

思った通り、なかなか楽しかった。偉人が遺したものから上手に拾い上げ、うまく展開させている。もう少し読みたいぞ。続編望みます。

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