紅玉と烏の黒。魔と現実。不思議なまま終わる戯曲。
泉鏡花の短い作品は尽きることがない。こうして気が向いたときにぱっと読める。今回も妖しそうなのをタイトルでチョイスしたら、得意の戯曲だった。なかなかサラッとは紹介しにくい展開。
売れない画家が酔っ払ってよろよろと歩いている。大きな絵を背に負っているのを見て、子どもたちは凧みたいだと寄っていき、画家も調子を合わせて遊んでやる。
やがて夕方が近づき、子どもたちは輪になって唄いだす。その真ん中に入って、画家は憑かれたように踊る。そこへ、烏の頭部、人の身体をした4つの影が現れ、輪に入る。子どもたちは走って去った。
1人の烏人は三脚に板のテーブルに組み立て式の床机を持ち出してワインを注ぎ、蝋燭の光に翳し、おお綺麗だ、奥様の白い手の細い指には重さうな、指環の球に似てること、などとのたまう。そして自分以外の3つの烏人に気づき、逃げ出そうとするが、勤めている邸の主人とばったり出会う。この烏人はカラスの衣装をまとった女だった。旅行に出ていたはずの主人は、女を捕え、話せ、と詰め寄る。
女は、奥様が虹に手を翳して、その時外した紅玉の指輪が烏にさらわれ・・と意外なエピソードを語り始める。一方、残る3つの烏人は・・
もとは烏の烏人は、指輪をさらった経緯などを話す。人間界を俯瞰して眺めた矛盾などもこぼし合う。あまり劇的には進行せず、画家が起きて幕となる。
最初の方を読んで、まさか後段のように展開するとは思わなかった。暗さを増す中の烏の扮装、そこに着物の裾の赤が見える。そして、奥様の指輪の赤、虹が庭の池に写る情景、過剰な美しさの描写が倒錯をも匂わせているも感じる。妖し好き、色彩好きという著者の特徴が今回もよく出ている。
最後の3羽の烏の話は不穏な、少し危険、グロなものを匂わせる。そこも演出かと思う。
しかし、やはり終わりがなんかもうひとつ、というのは気にかかるかな。これまでだと、結びも見事なものがあった。人体の動きと色とほのかなエロを思わせた「紫陽花」とか。戯曲なのでありなのだろう。
おもしろく意外なストーリー立て、子どもの声はあやかしを呼び、黒、赤、虹色、不穏・・と連なる。やはり、うまいな。
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