◼️ 伊勢英子「グレイが待ってるから」
シベリアン・ハスキーと家族が過ごした年月。愛犬家には誰しもある経験の言語&絵画化。
友人が断捨離するけど欲しい本ある?と写真を送ってきてくれて、絵本作家・画家・エッセイストのいせひでこさんファンの私は、娘さんが読んでたという伊勢英子2冊を、んじゃコレ!といただいた。
絵本と絵、書き物の感性と表現が心に響く人。
話はもらえることになったシベリアン・ハスキー犬、グレイとの生活である。散歩のコース分け、訓練士と絵描きの自分へのグレイの態度の違い、散歩ではリードを引っ張り、鼻をスピスピ鳴らして嗅ぎ回り、誰にでも飛びつく困ったグレイ。北の犬は真夏に病気になり、入院したりする。
私は生まれてから就職で家を出るまでほぼずっと犬と共に過ごした。結婚してからは19年間、犬が1頭か2頭いた。
グレイは
私に
風をおいかけさせ
季節をおいかけさせ
時を忘れさせた
グレイは
私を
ぼんやりにし
夢想家にし
探検家にし
即興詩人にした
犬の散歩は人にとって実は大きなルーティンである。犬のことを考えて、また自分の気分で、つとめて自然が多いところを通る。犬のために外出する、東京で住宅街や大きな公園を縫って1時間以上あることもあったし、こちらでは山の方へ、やはり長いことのんびり歩いた。小型愛玩犬でさえそんなもの。イノシシが出現して両脇に2頭抱えて走ったこともある。
犬と飼い主がいればそれだけさまざまな生活があるだろう。それでも分かるな、と思う部分も多い。旅立つと散歩に行かなくなる。気がつけば大切なものを失ったというか、大きな転機を迎えていたことに気がつく。春の山で楽しみにしていたやまぶきの花ももう数年見ていない。
また犬の病院は、保険がきかないから高いのだ。それもよく分かる笑
犬は色々なものを臭う。自分とグレイは似ている、と思う伊勢さんはまた、匂いを表現する。二月の凍った夜道は刃ものの匂(原文ママ)、ぼたん雪はうす桃色のほこりの匂、粉雪はかすかな本の匂・・。
別れは、サラッと描かれている。犬を飼うということは情操に大きな影響を与え、けっこうおおわらわ。いなくなってしまうと、楽だしお金もかからない。残るのは喪失感とある時代の終わり。
あまり浸り込まないように、今回もまた、伊勢さんの感性と性格と表現を、豊富な挿絵とともに楽しんだ。
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