2025年5月26日月曜日

5月書評の11

◼️山口つばさ「ブルーピリオド 17」

たまにはマンガ。久々に感動した。つかむものがない中の、原点。

「ブルーピリオド」成績はいいが渋谷でオールするような高校生、矢口八虎が美術に目覚め、最難関の東京藝術大学を目指すことになる、という作品で、渋谷の早朝の青さ、好きなことを好きだと言うことの怖さといった感性、予備校の特異なカリキュラムとキャラのアクの強さに関係性、さらにはYOASOBIが「群青」という、インスパイア曲を作ったことで話題を呼んだ。アニメ化に、去年は映画化もあり、という人気作。

ただ、受験特訓時までが盛り上がった反動か、入学後は正直、目的が失われたような感があった。教授から厳しく指摘され、指導の正当性を疑い、あるグループに入り浸ったり、同じ科の仲間で夏休み創作合宿をしたり、コンクールに入賞したり、ホストクラブでバイトしたり、美術と社会の経験は積んでいたけども、なんとなく決め、がないような、物足りなさがつきまとっているように思えた。受験は受かれば正義、しかし芸術活動にはそんなものはない。

今回は長かった期間の、帰結の予感が提示される。そして、高校美術部の再集結、有名になった者もおり、自然と立場の違いは出来ている。

何より、八虎を美術に目覚めさせる絵を描いた、憧れの森まる先輩が再登場する。良かった、すれ違いが続いてやっと、2人の関係がまた太くなり、交差する。

どこか岐路のようなタイミングで原点に戻る、その流れに感動してしまった。ただ原点はすでに原点でない。鈍い痛みに涙。読み続けて良かったとしみじみ安堵する。

映画もとても良かった。次は世田介くんもっと濃いめに出してほしいな、できたら天才・桑名マキも。続きも映画にならないかなと期待。

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