◼️ 智佳子サガン「銀の画鋲 この世の果ての本屋と黒猫リュシアン」
神戸・元町の某所にて。
人の来ない本屋。主人はワルツさん。牧師夫妻にこき使われる少女カトリーヌのために、黒猫リュシアンは奥の手を・・
ホームタウン近くの兵庫・芦屋の古書店で入手した児童本。舞台はアトランティスのあったところ、だからエーゲ海の島か。
ワルツさんはロマの出でこの店を譲り受けるまで放浪してきた。ブラック・リュシアンも似た身の上で誰にも懐かない猫。ある日牛乳を届ける少女カトリーヌが瓶を割ってしまったことが元で交流が生まれ、本好きのカトリーヌは店で本を読むようになる。彼女が住む牧師館の夫妻にひどい扱いを受けていると知ったワルツさんやリュシアンは力になりたいと思うが、やがてカトリーヌは大陸に働き手として出されることが決まるー。
日がな一日、何もしないワルツさん。しかし少しずつ、生い立ちや心のうちが明かされる。誰も来ない本屋に立ち寄る人、封を開けていない手紙はやはりなんらかの訳ありだ。
全体に詩的、ちょっとディレッタント風味で、ルーズの中に暖かみがあるが、すべて解決するわけではない。リュシアンの、猫らしいクール態度としなやかな身のこなしで日々を過ごす、そして、だから猫らしくない情のある気持ちと決然とした行動が際立つ。
懲悪的なストーリーだけれども、深みもある、そして最後に寄って立つのは、誰しもが知っていること。そして誰にも永久にわからない。
ちょっと散漫な部分もあるけども、黒い森の神秘や猫の特性を活かしたほんのりした話。
最近よく児童ものを読んでいる。やはり感じるものはそれぞれあるな、という想いだ。
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