2025年4月12日土曜日

4月書評の4

◼️ 村治佳織「いつのまにか、ギターと」

ギターは不思議に癒される。平易な言葉が息づいて、空気感が伝わる本。

ブックカバーはお手製のヘップバーン😎

先日行ったリサイタルで魅了されてしまい、エッセイ本を借りてきた。いやーギター聞き応えがあって明るくステージ映えしてステキな人やな、というのが正直。奏者の本は楽器や演奏への向き合い方、さらには天啓、というか閃く才能を持つ人は何を考えているのか、などを知りたくてよく読む。

ギターとの出会いや家族、生まれ育った故郷・東京のこと、友人たちとのお付き合いに、ラジオのナビゲーターとしての経験、故障、さらに大きな病気で休養して考えたこと、などなどまさにエッセイ、語りかけるような文調で、心のうちが描かれていると思う。

演奏者の書き手は様々で、熱い思いを書く人もいれば楽曲に対する心酔の境地を綴る人もいる。坂本龍一さんなんかは生い立ちとデビュー以後の来し方がすごく面白かった。だいたいどこかに光る部分や覚えてしまう言葉が潜んでいるもの。

村治さんは前向きで、ナチュラル。そういう書き方の人もいる。平易な言葉で明るく、感謝の念にあふれている。演奏の聴き手に対する意識からか、読者に対してのリスペクトが感じられる。

アランフェス協奏曲を作曲したホアキン・ロドリーゴと会ったこと、吉永小百合夫妻との交流から日常、東京での散歩、大またでぐんぐん歩くことまで、なんというか語りの言葉ひとつひとつが信じられて、空気感が漂う。

好き、ばかり書く人は、実は嫌い、も強かったり、感情が昂ったりもあるかも、なんて想像しがちではあるけれど、素、天然なのかエンターテイナーなのかこの本にはほんと良い気持ちにさせられる。

大病で活動休止したときに、最初はなんで自分が、とかどういう治療をするのか、話を聞いたり調べたり、これからどうなるのか、どうしてそうなったのか、思考がぐるぐる回って前向きになれなかったと。そこで

「なんでそうなったのかは、わからなくていいや」

と割り切ったくだりには感銘を受けた。大病をしたことはないが、悲しいことがあった場合、人間、思考の無限ループに陥りがち。なるほど、だった。

ここ数年で2回、村治佳織さんのステージ演奏を聴いた。1回はピアニストが目当てで、出演することを会場に行くまで知らなかった。でもそこでアランフェス協奏曲を堪能しその弾く姿を見て、今度はリサイタルに行きたいなと強く思った。

まあ中高でギターを齧りしかし上達せず聴く専に回って興味は持ち続けた。15歳でデビューした村治佳織さん、知ってはいたけども、アランフェス協奏曲は大好きだったけども、どちらかというとアコースティックが好きな私はあまり聴いてこなかった。

それが、リサイタルでもう、「ハウルの動く城」の「人生のメリーゴーランド」とか「ニュー・シネマ・パラダイス」の愛のテーマとか「主よ、人の望みの喜びよ」の音に溶かされた。作中では愛用のホセ・ルイス・ロマリニョスのギターに触れられていて、次回また音を確かめたい気持ちにかられる。

YouTubeで演奏を聴きながら読み切った。写真も多くて光あふれるエッセイ集。やっぱりステキやわ😆

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