2024年9月25日水曜日

9月書評の8

◼️ 星新一「白い服の男」

SF的コント集。なんでもありで、人間洞察も含む。だからおもしろい。

長編がロマンで、短編をコントと言うことを知ったのはいつだったか。いま星新一原作の15分ドラマシリーズを観ている。表題作のドラマもあり、読んでみる気になった。

【白い服の男】世の中から「戦争」という概念ごと消し去ろうという方針のもと、特殊警察機構は、きょうも違反者を摘発している。過去の戦争の情報に触れたりするのは重大な違反で射殺も視野に検挙に向かうー。

【悪への挑戦】
犯罪の瞬間を再構成、警察の捜査、犯人逮捕、裁判の模様を詳細に撮影し、最後に生放送で死刑の場面を流す大人気番組「悪への挑戦」は犯罪発生率の低下に大いに役立っていた。番組ファンの若い女は偶然の成り行きから逮捕されー。

【時の渦】
人類は突然、ある日時以降のことは予想も検討もできなくなった。気象、経済、スポーツ・・コンピューターすら、通常「ゼロ日時」から先の予測が出来ない。30歳、母も恋人も亡くした若い孤独なサラリーマンもついにその日を迎えた、そして、世界にはさらなる異変がー。

なかなかシビアで大仰な仮定の世界。おもしろそうでしょ^_^

まさに奇想天外で、なにかしらのアイロニー、アンチテーゼを含み、間のリクツはすっ飛ばし、飄々としてユーモアを交えながら、オチに向かって興味深い展開をする。まずは発想力、そして構成力。昭和という時代も見える気がする。

不可解な状況で発見された遺体の捜査が意外な犯人に行き着くまでのドタバタを描いた【矛盾の凶器】もおもしろかった。

この本は1974年、昭和49年に出版され、私が手にしているのは令和4年刷。国民に愛される作家と言っていいだろう。散発的にしか読んでないけども、どれを手にしても楽しそう。折に触れ読もうと思う。

この本には入っていないが、ドラマの中では【見失った表情】という話が良かった。大多数の人が美容整形をする世界。主人公の女・アキコは整形した上に違法な「表情操作機」を装着する。大学時代の同級生の男・黒田は、彼女が踊るように歩いているのを見て、アキコではないかと声をかける。黒田も整形していて、互いに別人のようになっている、気づく原因をダンスに求めたことになるほど、と感じ入った。その後2人は夜景の川沿いで踊るー。見どころ満点、星新一らしい展開もあるけれど、気持ち良いハッピーエンドの話だった。

話は戻って【白い服の男】。
ドラマでは、特殊警察機構の署のロケ地、要塞みたいな建物に目を引かれた。調べてみると、所沢にある隈研吾事務所監修の角川武蔵野ミュージアム。新しいコンセプトの建築、図書館、美術館の複合施設だという。ワクワクするね。行ってみたいな〜。

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