◼️星野道夫
「森と氷河と鯨 ワタリガラスの伝説を求めて」
ユーラシアとアラスカ、つなぐものはワタリガラスの神話。スピリチュアルな探究。
京都の星野道夫写真展に行ってきた。アラスカに拠点を置いた写真家・エッセイスト。見たことのない悠久の世界の写真に、深い思惟と感覚が融和したような文章には強く感銘を受けたもの。彼はワタリガラスの伝説を求めてアラスカからシベリアへと渡り、カムチャツカ半島でヒグマに襲われ急逝した。
星野道夫は10代の頃アラスカに憧れ、当地の村長に受け入れてくれるよう手紙を書いて、返事が来たシシュマレフというベーリング海に面したイヌイットの村で3か月ほど過ごした。後アラスカに居を構えた。
鯨やアザラシの漁で生きる人々、北極圏のオーロラや氷河、ホッキョクグマ、グリズリーやカリブーなどの動物、山、森、ユーコン川の旅,さらには物資などを運ぶ黎明期のパイロットの男女などを紹介する数々の著作がある。
そして、生前最後の記録となった本書はよりスピリチュアルだ。氷河期にベーリング海は干上がってベーリンジアという平原となり、そこを伝ってユーラシア大陸のモンゴロイドはアラスカに渡ってきた。そして南北アメリカへと散っていったー。星野はそこにロマンを感じ、イヌイットやインディアンに伝え続けられているワタリガラスの伝承を取材する。それは彼らのアイデンティティを問うことでもあった。
写真展ではこれまでの著作から写真と文章を抜粋して展示、ほとんどは覚えていてひどく懐古の念に打たれた。初読のハードカバー版は東京に転勤して帰ってきたどさくさに紛失してたので文庫版を会場で買ってきた。
クリンギット・インディアンの墓守で不思議な能力を持つ男、ボブ・サム。カナダ国境に近いクイーンシャーロット島へとインディアンが作り打ち捨てられている多くのトーテムポールを見に行く旅、ワタリガラスの川タティシンシィニ、ザトウクジラ、リツヤ・ベイの怪物、旅をしながら星野はワタリガラスの伝説を追う。そしてロマンを求め、シベリアへー。
シベリア編はメモ書きと写真のみでエッセイの形になっていない。遺された記録と、星野氏の記憶の断片。最後近くの、ベーリング海を見渡せる、鯨の骨の遺跡の写真には圧倒される。
サイコーに好みの1冊です。
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