2024年9月17日火曜日

10月書評の5

◼️ジェローム・デビッド・サリンジャー
 「ナイン・ストーリーズ」

ユーモアとキレには感心させられる短編集。意図が感じられたり、汲み取れなかったり、というとこはアメリカン?

勝手な印象だとは思うけれども、アメリカの小説は大きな流れがあるというよりは、全体で細かい機微をあぶりだすものが多いかなと。会話を多めに使ったりすると興醒めだったりもする。また微妙な間合いを読みきれないこともある。

サリンジャーみずからセレクトしたという9つの短編集。上の印象にユーモアとキレとを含ませた、というイメージ。

「対エスキモー戦争の前夜」はテニス少女2人の相克と微笑ましい和解。「笑い男」は少年たちと野球遊びをする青年の恋。「小舟のほとりで」は母子の関係性が興味深く最後の最後にほうっとする。

「エズミに捧ぐ」は自らの戦争体験からだろう、心に負った傷が柔らぐ瞬間をじわっと追体験するシンプルな話で、「愛らしき口もと目は緑」はコントのような喜劇で「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」はピカソと親友と嘘八百を並べたて美術学校の教師になった男の、やはりコメディぽい話だ。

この人の長編は、ちと合わなかった覚えがある。今回、短編はどうしてどうして、と意図が分かるものには感心した。最初の物語あたりではうーんやっぱりアメリカンな・・とやや敬遠気味な心持ちになってしまったけれど持ち直して読み終えた。

短編はタイトルもおもしろいね。これくらいでなければ。

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