京都駅美術館でやってたオードリー・ヘプバーン写真展のチラシをなんとかブックカバーにしたく、他のリーフレットでまず作ってその上に貼り付けました。栞は鏑木清方が描いた樋口一葉「たけくらべ」の美登利。満足。
◼️ 伊与原新「オオルリ流星群」
やばいなあ、星好きにはたまらない話だし、泣けてしまう。私も天文台欲しい。excellent !
伊与原新は短編集「八月の銀の雪」「月まで三キロ」を読んで好感を持っている。今回初の長編。流星群に天文台とくればもうかぶりつきですね。貸出中だったのが返ってきてたのを見て即借り。
45歳の久志は地元の秦野市にある薬局の跡取り。2人の子持ちで、チェーン店の大きなドラッグストアが近くにでき、店はジリ貧で妻に売り上げを伸ばす方策を迫られてはうるさがっていた。地元には中学の理科教師で娘持ちの千佳と、独身でテレビ番組制作会社を辞め、司法試験に挑戦しているお調子者の修がいた。
千佳と修は同じ高校で、3年の文化祭に空き缶でオオルリの大きなタペストリーを造って展示した仲間だった。主力メンバー6人のうち、和也は会社を辞めて引きこもってしまい、そしてリーダー格だった長身イケメンのスポーツマン、人気者の恵介は途中でなぜか作業を投げ出し、卒業後自殺していた。
久志、修、千佳の3人は、やはりオオルリ作成のメンバーで国立天文台に就職したスイ子こと山際彗子(けいこ)が秦野に戻ってきていることを知り、再会する。スイ子は天文台を、作るつもりなんだ、と明かすー。
物語は久志と、千佳の目線から交互に展開される章立てである。それぞれに屈託のあるメンバーが、再び集まり、天文台を作り上げるべく協力し合う。謎は明らかになり衝突もあり、進歩もある。経験による成長と何かを創り上げる時に得られる感動は、物語の大きな特質だろう。よくあると言えばそうだが、ならば構成の確かさで勝負、だろう。しかも、題材に夢と広がりがある。ドーム付きの家、天文台を所有するってやっぱり憧れてしまう。
私の高校は卒業後30年の年に同窓会総会を主催する。そこで再会したり、話したことのなかった人と仲良くなったりする。もう男女の垣根も低い。私も多くの知己を得て、みなが作ってきた人生を知るにつけ不思議な念に、今も囚われている。
この作品は、青春ものでありつつ、望郷と懐古だけではなく、何十年も経った後の感慨、ある程度人生が進んでしまった後の独特な感覚を追体験するものかと思う。最後の40ページくらい、築き造りあげるタイミングと登場人物の葛藤が溶けていくのがマッチした進行に、めっちゃ感動して心が揺れた。
星好き。流星群を何時間も待ったり惑星接近などのイベントもよく観る。最後の専門的な畳み掛けも見事。響いたラスト、あとがきの執筆の動機も爽快な気分になった。
ホントに良い読書でした。
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