2023年5月1日月曜日

4月書評の13

リニューアルした京都タワー地下のフードコート。京都だけにハモ天丼を。10分烏丸通りから堀川通りまで歩いて西本願寺横の龍谷ミュージアムへ。気になってたんだよね。


◼️ 永井紗耶子「華に影 令嬢は帝都に謎を追う」

明治の末、パーティーの席上、権勢を誇る伯爵が不審な死を遂げる。お嬢様・斗輝子と書生の影森が謎に挑むー。

華族社会の光と影のお話。イメージだが、西洋の真似をして導入した貴族階級にははかない明るさと深い闇がよく似合うと思う。

武器商人、千武(ゆきたけ)男爵の孫娘、16歳の斗輝子は、女学校のそりの合わない同級生と薙刀勝負をして負かしてしまうようなお転婆お嬢様。ある日、明治維新の立役者とも言われ権勢を誇る黒塚伯爵、その生誕記念の夜会に千武家の名代として出席するよう祖父に命じられる。黒塚には前妻を自らの手で斬殺したという噂があり、現在は落ちぶれた八苑子爵家の娘を妻としていた。斗輝子は祖父が面倒を見ている帝大の書生で、ずけずけと物を言う影森とともに黒塚の屋敷を訪う。

パーティーの最中、抜身の刀を振り回すパーティが現れ黒塚に向かうが、影森の活躍で取り押さえることに成功する。その直後、皆が黒塚を振り返ると、伯爵は息絶えていた。謎を解こうとする影森に、謎が気になる斗輝子もついていく。

爵位、文明開花、パーティ、馬車に人力車、いまはレトロモダンとして懐かしい帝都の風景、世情不穏、激動の時代の中の謎は、読者に独特の黒さを放つ。果たして毒を盛ったのは何者なのか。

この小説は、謎そのものではなく、黒塚家、八苑家、そして悪どいとも評判の千武家が絡む複雑な人間模様を描くのが主だと思う。割り切れなさ、特にこの時代の女性にとっての人生の儚さ。チェーホフ「かもめ」をも彷彿とさせる部分もある。

影森と斗輝子のやりとりは微笑ましい。ただ斗輝子は気は強いが、内向的で、主役として活躍するというわけではない。

ふむふむ。大事な謎は、先が読めてしまった。全体としての関係性も少しわかりにくかったかも。

まずまず楽しめた。著者さんは最新作が直木賞候補となったようだ。いずれ他の作品を読む日も来るかもしれないと、楽しみにしている。

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