2023年5月1日月曜日

5月書評の1

混む前に京都。午前から行き、祇園の何必館でアラーキーの写真と所蔵の北大路魯山人の陶芸作品に、魯山人お気に入りの村上華岳の仏像絵などを見て、たまたまポスターを見かけたミッド祇園鍵膳の河井寛次郎一族の展示を観に行く。やっぱりゴッドファーザーの寛次郎はなにか光るものをいつも感じる。


昼前に原田マハプロデュースの店を訪問。徳島のサバ缶詰さとうゆずトマト煮を購入。


◼️ Authur  Conan  Doyle

The Crooked Man (背中の曲がった男)


人生、というスパンを実感する物語。謎の言葉はまさにキーワード。ホームズものらしさがよく出ています。


ホームズ短編原文読み32篇め。あと24です😎まだまだ楽しめそう。


さて、夏の夜2345分頃、ワトスン夫妻の家に突然ホームズが訪ねてきます。


"I hoped that I might not be too late to catch you."「寝てなければいいがと思っていた」


"You look surprised, and no wonder!"

「驚かせたようだね、ムリもないが」


そりゃまあびっくりするでしょ、まあワトスン夫妻は歓迎するんだけれども。ゲスト用の部屋空いてるよな、泊まらせてね、とホームズはまあ学生が下宿に遊びに来るみたいに気ままに振る舞います。


一緒にパイプをふかす2人。


I was well aware that nothing but business of importance would have brought him to me at such an hour, so I waited patiently until he should come round to it.


「大事な仕事でなければホームズがこんな時間に訪ねてはこないだろうと私には分かっていた。だから、彼が口を開くのを辛抱強く待った」


前の「唇の捩れた男」にもありましたが、ホームズが考え事をしている時に沈黙でサポートしたり、今回のようにじっと待ったりできるところ、この辺がホームズがワトスンをこうしてわざわざ迎えに来る理由なのかも知れません。


ホームズはワトスンの近況についての推理をあれこれと披露しながら、やがていま手がけている事件に触れます。最後の段階に立ち会ってくれればありがたい、と。


"Could you go as far as Aldershot to-morrow?"

「明日オルダーショットまで行けるかい?」


もちろんワトスンはOK。そして眠くなければ事件のあらましを話そうか?というホームズに喜んでワトスンは付き合うのでした。この2人らしい、微笑ましい光景です。


"It is the supposed murder of Colonel Barclay, of the Royal Munsters, at Aldershot, which I am investigating."


「今調べているのはオルダーショット、ロイヤル・マロウズ連隊のバークレー大佐が殺害されたらしいという件なんだ」


2日前に起きた事件でした。この連隊は有名で、クリミア戦争やインド・セポイの大反乱で目覚ましい働きを見せてその後も武功が多く、バークレーはその老練な連隊長でした。一兵卒からインドでの武勲で将校となった人物です。


以下は事件と周辺情報概要ー


軍曹時代に結婚した、いまでも大変美しい妻がいて、評判の仲の良さだった。少し大佐の方が愛情が強く、妻の方はあからさまには出すことがなかった。


大佐にはちょっと奇妙なところがあった。陽気で愉快な軍人、しかし時として乱暴で復讐心を見せることもあり、食堂での陽気なおしゃべりの最中、急に気分が落ち込んで鬱となり何日も続くことがあったり、暗くなると1人になるのを嫌がったりといった面が見られた。


妻のいる将校は駐屯地から半マイルほどのところに家を構えている。大佐も街道そばの家に妻と3人の使用人と住んでいた。子どもはおらず、長期滞在の客もめったに来ない。


大佐の妻はローマ・カトリックの信者で、貧しい人に古着を提供する協会設立のための活動をしており、事件の当夜も、隣の若いミス・モリスンと夜8時からのその集まりに出掛けて915分に帰ってきた。


帰ってきた夫人は、夜に使うことはめったにないモーニングルームという、大きなガラス戸、いわゆるフランス窓、から庭の芝生に出られる部屋に入ってメイドにお茶を頼んだ。ガラス戸のブラインドは降りていなかった。


食堂にいた大佐は妻が帰ったと聞いてモーニングルームに行った。10分後、お茶を持って行ったメイドは夫妻の激しい口論の声を聞いた。ノックにも返事はなく、中から鍵がかかっていた。メイドは人を呼びに行き、料理係の女性、御者とこの家の使用人全員がドアの外で聞き耳をたてた。


"You  coward!"「卑怯者!」


"What can be done now? What can be done now? Give me back my life. I will never so much as breathe the same air with you again! You coward! You coward!"


「もうとりかえしがつかないじゃないの!何ができるというの?私の人生を返してちょうだい!これ以上同じ空気を吸うのも嫌よ!卑怯者!、ひきょうもの!」


途切れがちにそんな言葉が聞こえていたその時、男の怒鳴り声と、ガシャンという音、女の悲鳴。大変なことが起きたと御者はドアを破ろうとしたが出来ない、はたと思いついて、庭へ出てフランス窓へ回った。すると戸は片側が開いていて、中へ入ることができた。


夫人は長椅子に倒れて失神、大佐は、脚を肘掛け椅子のほうへ向けていた。そして暖炉の片隅のほうにある頭は血溜まりの中にあり、息絶えていた。


部屋の中に鍵は見当たらず、御者はフランス窓から出て医者と警官を呼んだ。死因は後頭部2インチほどの裂傷で、鈍器による強打が原因かと思われた。現場には彫刻を施した、硬い奇妙な棍棒が転がっていた。大佐は世界各地の武器をコレクションしていて、そのどれかだろうと警察は目星をつけたが、使用人たちは見覚えがないとのことだった。


ホームズは、捜査を依頼してきた、大佐と同じ連隊のマーフィー少佐から情報を得ていた。ホームズが直接尋問したところ、メイドは2度ほど夫人が「デイヴィッド」という名前を口にしたと聞き出した。


"The point is of the utmost importance as guiding us towards the reason of the sudden quarrel."


「これは、突然の諍いの理由を探るのに、大変な重要な点だよ」


大佐のファーストネームはジェイムズなんだから、とホームズ。


また、大佐の顔は恐怖と不安の表情に歪んでいた。その表情を見て気絶した者が何人も出たというー。溺愛する妻の殺意を見たのかどうか、夫人は悪性の脳炎で正気を取り戻せていない状況だった。一緒に外出したミス・モリスンは夫人が突然不機嫌になった原因は分からないと話している。


ここまでの事実からホームズは推理した。大佐は死んで、夫人は人事不省、鍵がなくなっているということは第三者が部屋に入ったに違いない、出入りができるのはフランス窓だけ。そう思って部屋と庭を調べてみると・・


芝生を駆け抜けて部屋に入った人の足跡が見つかった。そして、ホームズが取り出した薄紙にはデザート用スプーンくらいの、動物の足跡がついていた。犬?猿?いや、とホームズは否定します。どちらのものでもない、体長は2フィート(61cm)をそれほど下らない、長い胴に短い脚、そして肉食で、窓際の籠のカナリアを狙ってカーテンを駆け上がった跡があった。


男が街道からバークレー夫妻のけんかを見ていた。ブラインドは上がっていて、部屋の灯りが付いていた。その男は芝生を走って突っ切り、正体不明の動物とともに部屋に侵入、大佐を殴り倒した、もしくは大佐が男を見て驚き、倒れたはずみに暖炉の角に頭をぶつけたかして、男は鍵を持ち去ったー。これだけのことが推定できました。


"Your discoveries seem to have left the business more obscure than it was before,"


「君の発見で、事件がより不可解になったようだな」


"Quite so. They undoubtedly showed that the affair was much deeper than was at first conjectured. "


「ホンマそやでー。最初に思うたよりもまちがいなくずーっと底が深そうな感じやわ」


7時半に家を出る時、夫人が大佐と仲睦まじく話す様子が目撃されている。夫人は帰ってきて夫がいなさそうな部屋に入りお茶を飲もうとした。大佐が来ると手厳しく非難を始めた。


つまりその間に夫人の、大佐に対する態度が変わる何かの要因があったということだ、ミス・モリスンは何かを知っているはずだ、と結論した。最初は大佐とミス・モリスンが不倫していて、それを告白されたのかと考えたが、ディヴィッドの件や闖入者の状況からしてどうも違う。そこでー


I took the obvious course, therefore, of calling upon Miss M., of explaining to her that I was perfectly certain that she held the facts in her possession, and of assuring her that her friend, Mrs. Barclay, might find herself in the dock upon a capital charge unless the matter were cleared up.


「だから、当然のこととしてミス・モリスンの家を訪ねたんだ。そして彼女が隠し事をしているのを知っていること、ミセス・バークレーは全てが明らかにならないと、殺人の容疑で裁判の被告席に立つことになるかも知れないことを説明した」


金髪で内気そう、すらっとして小さく妖精のようなミス・モリスンはしかし賢さが窺えた。彼女は話し始めた。


会合の帰り、暗い通りに差し掛かった。


"There is only one lamp in it, upon the left-hand side, and as we approached this lamp I saw a man coming towards us with his back very bent, "


「街灯は左側に1つしかありませんでした。そこへ近づいた時、背中がひどく曲がった男の人がこちらへ歩いてくるのが見えました」


男は何か箱のようなものを背負って、身体に障害があるらしく、頭を垂れ、膝を曲げて歩いていた。そしてすれ違う時、恐ろしい声を発した。


"My God, it's Nancy!"

「なんと、ナンシーじゃないか!」


バークレー夫人は驚愕し、失神しかけたー。しかしくずおれるところを抱き止められた夫人は、男へ親しげに話しかけた。


"I thought you had been dead this thirty years, Henry,"


「あなたは30年前に死んだと思っていたわ、ヘンリー」


夫人の声は震えていた。


"So I have,"

「その通り、私は死んだのです」


ぞっとするような声音、髪と髭には白いものが混じり、顔じゅうシワだらけだった。


ちょっと先に行ってて、とミス・モリスンに頼んだ夫人はこの男と話を続けた。しばらくして追いついてきた夫人の目はきらきらと輝いて、男は拳を振り回して怒っていたように遠目に見えた。別れ際に夫人は、あの男は落ちぶれた昔の知り合いで、このことは誰にも話さないでほしいと頼んだ。約束だから警察にも言わなかった、と。


オルダーショットには軍人以外はそんなにいない。また身体的にも目立つ。男の住まいは1日の捜索で見つかった。夫人と会った通りの下宿。女主人によれば男の名前はヘンリー・ウッド、5日前に来た。動物を箱に入れていて、夜になると兵営の食堂などへ出掛け、動物を使った手品、曲芸や見せ物をして稼いでいる。


聞いたことのない言葉を使い、ここ2日間ほどは寝室でうめいたり、すすり泣いたりしている。金払いはきちんとしていた。前金でもらった貨幣はインドのルピーだった。


彼は女性たちと別れた後、離れて尾行し、大佐夫妻が諍いをしているところを見かけ、部屋に走り込み、その時動物が逃げ出した。絶対に確かだ。


"But he is the only person in this world who can tell us exactly what happened in that room."


「でもあの部屋で何が起きたのか正確に語れるのは、世界であの男ただ1人だけなんだ」


その男のところへ証人としてワトスンに一緒に行ってほしい。協力的ならいいが、でなければ逮捕状を請求しなくてはならない。ベイカーストリート・イレギュラーズを1人張り付けてある、と。


"We shall find him in Hudson Street to-morrow, Watson, and meanwhile I should be the criminal myself if I kept you out of bed any longer."


「明日ハドスン街でその男に会えるだろう。ところで君をこれ以上寝かせないと、僕が犯罪者になってしまうな」


なんとここまではホームズが訪ねた夜の話だったんですね。で、ようやっとこの日は終わり、ホームズ&ワトスンは翌日1110分ウォータールー駅発の列車に乗ります。正午すぎ、ハドスン街に着きました。


余談、オルダーショットはロンドンから南西に約60キロ、とあります。調べてみたら東京から東へだいたいつくば市あたり、西へは藤沢と小田原の中間あたり、大阪からは西へ加古川あたりの感じ。1110分の列車で正午に着く、加古川まで新快速で53分、他所でも感じたことありますが、この辺はあまり実情を反映しているとは言えない?のかもですね。



ハドスン街に着くと、張り付けておいた少年、シンプスンが寄ってきて、


"He's in all right, Mr. Holmes," 


「一晩中部屋の中にいましたよ、ホームズさん」


"Good, Simpson!"


ホームズたちは男と会いました。暑い夏というのに暖炉に屈みこんでいて、部屋の中はかまどのようだった。かつては美男子だったようにも見える男はうさんくさそうな目で、立ち上がりもせず手招きだけで椅子に座るよう促します。


ホームズは単刀直入です。


"You know, I suppose, that unless the matter is cleared up, Mrs. Barclay, who is an old friend of yours, will in all probability be tried for murder."


「もし事件の全てが明らかにされないと、あなたの古い友人であるミセス・バークレーが殺人の容疑で裁判にかけられることをご存知ですよね」


あの人に罪はない、私にもない、と言い募るヘンリー・ウッド。では誰が大佐を殺したのです?とホームズ。


"It was a just Providence that killed him. But, mind you this, that if I had knocked his brains out, as it was in my heart to do, he would have had no more than his due from my hands. 


「彼が死んだのは、まさに神の裁きです。よく聞いてください。私がもし彼の脳天を打ち壊したとしても、心からそうしたいと思っていたようにね、それでも彼は私の手で当然の報いを受けたに過ぎなかったでしょう」


ウッドは真相を語り始めました。いま自分は背中がラクダのように曲がり肋骨も捩れているけれどもかつては大隊の中で評判の美丈夫の伍長だった。バークレーは軍曹だった。連隊一の美女、軍旗軍曹の娘、ナンシー・デヴォイ。ウッドとバークレーは彼女を争い、彼女はウッドを愛していた。しかしナンシーの父親は無鉄砲なウッドよりも、教育があり、出世を約束されていたバークレーと結婚させたがっていた。それでもどうにかウッドがナンシーと結婚できるかと思った頃、セポイの大反乱が起こり、包囲された。民間人、女性子供を伴って突破はできない。ウッドは救援隊へ連絡をとるため、囲みを抜けて外へ出る危険な役に志願した。


地形に詳しいバークレーとよく相談してルートを決め、出発したとたん、待ち伏せに遭い、ウッドは囚われの身となった。セポイの断片的な会話から、バークレーがインド人の使用人を通じて、ウッドを売り渡したと分かった。


翌日連隊の駐屯地は救援隊によって救われた。しかしウッドは退却する敵に連れ去られた。拷問され、脱走を図り、また捕まって拷問の繰り返し。そのためこんな身体になってしまった。再び白人の顔を見るまで何年もかかった。


ヒマラヤの兵が自分を捕らえていたセポイを殺し、今度はヒマラヤ兵のもとで奴隷になった。しかし脱走に成功、アフガニスタンをさまよった後、やっとインドに戻り、手品で食いぶちを稼いでいた。復讐心はあったが、哀れな身体になってしまった自分が名乗りを上げても恥をかくだけ、立派に死んだと思われていた方がいい。しかし年月が経ち、望郷の念に耐えかねてイギリスに戻ってきた。兵隊の楽しませ方は分かっているから、稼ぐことができると思った。


あの日、外からバークレーを攻めるナンシーを見て感情を抑えかね、部屋に飛び込んだ。大佐は、人間のものとも思えない表情となり、倒れて暖炉の角で頭をぶつけた。しかし倒れる前に死んでいたと見えた。良心の呵責に耐えきれなかったのでしょう。倒れたナンシーを受け止め、彼女が持っていた鍵を受け取った。


よく考えてみれば状況は自分に不利そのもの、鍵をポケットに入れて逃げることにした。飼っていた「テディ」が逃げて、追いかけているうちに自分の杖を落としてしまった。


"Who's Teddy?"


この問いにウッドはだまって檻の蓋を上げました。とたんに赤褐色、しなやかな身体に赤い目の動物が躍り出ました。


"It's a mongoose,"


ワトスンくんが叫びます。エジプトマングースで、ウッドは毒牙を抜いたコブラをマングースに捕まえさせる演し物を見せていたのでした。


ホームズは、もしもバークレー夫人に不利な状況になったらウッドが名乗り出る、という約束をして部屋を後にします。


折よくマーフィー少佐に会いました。少佐は会うなり、もうお聞きかも知れませんが、大騒ぎのわりには大したことは何もない事件でしたな、と話しかけます。


えっどーゆーこと?


"The inquest is just over. The medical evidence showed conclusively that death was due to apoplexy. You see it was quite a simple case, after all."


「検死審問が先ほど終わりました。医学的に言って死因は間違いなく脳卒中です。結局かんたんな事件だったのですな」


底の浅い事件だったんですね、と調子を合わせたホームズ。帰ろう、とワトスンを促します。激しい諍いはただの夫婦げんか、怒鳴り声は大佐自身の、ひょっとして断末魔の声かもしれません。何者かの侵入の形跡は気になりますが、当地の警察は知らない。形としては大山鳴動して鼠一匹、で事件ですらありません。しかしその裏には、取り返しのつかない人生のドラマがあったのでした。


"There's one thing, If the husband's name was James, and the other was Henry, what was this talk about David?"


「1つだけ分からないことがあるんだがね、夫の名前がジェイムズ、もう一方の男がヘンリーなら、ディヴィッドってのは誰だったんだい?」


"David strayed a little occasionally, you know, and on one occasion in the same direction as Sergeant James Barclay. You remember the small affair of Uriah and Bathsheba?"


「君も知っての通り、ダビデはときどき道を踏み外し、一度はジェイムズ・バークレー大佐と同じようなことをした。聖書のウリヤとバテシバの話を覚えているだろう?」


旧約聖書のサミュエル記で、イスラエル王ダビデは(David、英語読みでディヴィッド)は部下のウリヤの妻・バテシバの美しさに心を奪われ、妊娠させたうえ、夫のウリヤを最前線に送り戦死させた、というくだりがあります。大佐夫人のナンシーは敬虔なカトリック教徒でした。


"That one word, my dear Watson, should have told me the whole story had I been the ideal reasoner which you are so fond of depicting. "


「ワトスン、もし僕が、君が好んで描く理想的な推理家だったら、あの一語を聞いただけで事件の全容が分かっていなきゃならなかったのさ」


最後説明のためにちょっと順番をひっくり返しましたが、まあ、これでThe endです。ホームズ物語を読むと、イギリス帝国主義時代、植民地インドに相当のリソースを割いていたことが分かります。軍人や商人が数多く現地で暮らしており、その家族もいました。日本でいう満州や清国内の租界を想像すればいいのでしょうかね。そこで起きた現地兵の大反乱は様々な悲劇をもたらし、本国にとって大きな衝撃となり、関係のあった人々のその後の人生にも影響を及ぼしたのでしょう。時代を反映して植民地絡みの話が多いホームズものの色合いがよく出た作品ですね。


一方で、ワトスン家に来たとき捜査はほぼ終結していて、物語の多くが回想です。当の本人に会いに行くだけで、ワトスンとともに冒険に乗り出すわけではありません。ただラスト、結論はすぐついて、終わりも早く余韻を残すように、カッコいい。物足らない感はありますが、進行が早く明瞭で謎も魅力的。事件は人間臭く、ナンシーの口からディヴィッド、という言葉が出るのも自然な理由をつけていますよね。


最初のほうで、ワトスンの近況を言い当てたホームズにワトスンがExcellent!と称賛し、ホームズが


"Elementary"「初歩だよ」


と返す場面があります。ホームズ役で有名になったウィリアム・ジレット、この人は当時なかったはずで、原典には出てきていない大きく曲がったパイプを、目立つように舞台で使用したアイディアマンです。そのジレットが


"Elenentary,my dear Watson."


「初歩的なことさ、ワトスンくん」


と改変したセリフを作り、ホームズの決めゼリフとなって、世界へ広まったとのこと。


まあコナンで言えば「真実はいつも1つ!」とか「江戸川コナン、探偵さ」みたいなもんですかね。










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