友人が京都へ来るというので、雨の中の京都行。初めて行った大徳寺の黄梅院、最近公開を始めたらしく、お初の訪問。
現代書アート、の展示会を見る。黄梅院の立派な作庭と書院作りに作品はめっちゃマッチしてて、ホント良かった。
大徳寺から歩いて5分ほどのカフェ「さらさ西陣」でぽろぽろ野いちごのクリームソーダとキャラメルソースのチーズケーキ。1930年建築の銭湯をリノベーションしたカフェ。マジョリカタイルと言われるカラフルでデザイン性の高いタイルを貼った内装。ソファ席やちょっと凝った椅子などオシャレ。若い人多かった。
同志社大学のハリス理化学館で源氏物語にまつわる資料を拝見。1800年代終盤のレンガ造りの建物はそぼ降る冷たい小雨の中、どこか虚しさも感じさせたりして。
ごはん食べて帰りました。京都散歩、きょうも満足😆
◼️ バンジャマン・コンスタン「アドルフ」
ぐずぐずとしがみつきの恋愛沼。しかし名作の匂いが。
きっかけは先に読んだ夏川草介「本を守ろうとする猫の話」。数々の世界の名作が紹介されている中のひとつで、興味を持った。知らない作品だった。
コンスタンは主に1800年代初頭に活躍した政治家、著述家で数々の浮き名を流した男でもある。「アドルフ」はコンスタン唯一の小説だそうだ。さほど長くない作品で、メロメロなテイストである。
ドイツに数ある国々、ある選帝侯の大臣の息子・アドルフは大学を卒業したての22才。他人を信用せず、沈黙したり、かと思うと節度を欠いてペラペラとしゃべったりと世間になじめない。人からは軽薄、皮肉屋などとうわさされていた。
アドルフはP伯爵の公認の愛人で、すでに彼との間に2人の子供もいる美しいエレノールに惹かれ、告白する。しつこい求愛にエレノールはアドルフを拒むが、やがてその愛を受け入れ、2人は愛し合うようになる。しかし、将来ある身のアドルフと、10歳も年上の、貴族の愛人。エレノールの束縛にうんざりし始めたアドルフ。そしてエレノールはアドルフとの愛のため、子どもさえ捨て、伯爵のもとを離れるー。
いやーぐずぐず、と書いたが、本当にそんな物語で別れそうで別れない。アドルフはエレノールの愛し方に煩わしさを感じ、うわさを知った父親やその友人の外交官の説得に心を動かされたりする。結婚することはない、と決めていて自分なしでの彼女の幸せを祈ったりするが、エレノールの泣きや懇願に弱く、態度を保留し続ける。
エレノールはポーランドの失脚した貴族の娘で、いわば生きるために男爵の愛人となり、献身的に男爵を支えてきた女。安定してはいるが見下されたような立場に憤りを感じていて、人生の脱出口を求めていた。
アドルフに溺れ、激しく愛するエレノール。でもその主張、彼女の心の根源的なかつえは読んでいて正当にも思えるし、行動はきっぱりしている。んでエレノール、若い恋人アドルフのの逃げ道をふさぐふさぐ。その言葉がまた確かな説得力を感じさせる。
なぜか、光源氏と一夜をともにし、以後彼を遠ざけた人妻の空蝉を思い出す。もう一度逢ってしまえば流されてしまう、という思いもあったのだろうか。光源氏は遊びでも、自分の気持ちはエレノールのようになる、という予感がしていたのだろうか。
コンスタンは数々の著作があるスタール夫人と長年の愛人関係にあった。アドルフを出版するにあたって、スタール夫人の反応をひどく怖れていたようだ。コンスタンは多くの恋をし、中には結婚するために互いに伴侶と離婚したというケースもあったらしい。27歳年上の女性とも付き合っている。ホンマに光源氏みたい。スタール夫人の支配から逃れようとスキを見ては結婚を画策したりしていたとか。この作品と重なるような話だが、エレノールには複数の恋人との経験が反映されているとか。
さまざまな煩悶に苦しみ、エレノールへの愛や嫌悪、そして何も成し遂げていない自分の状況、大人の狡知に悩み苛まれるアドルフ。ぐずぐず、しかしなぜか共感を生む部分があるのも事実かも知れない。自分を考えても、特に20代後半は気持ちが揺れ動く時期で、男性は大人になり切れてない、と思う。誰しも理屈通りに動けず苦々しさを感じていた経験はあるのでは、と考えさせる作品だ。
小説家ではなく政治家として人々に愛されたというコンスタン。唯一の物語は日本の文豪をはじめ、現代でも多くの人に好まれているという。おもしろい読書体験だった。
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