2022年12月23日金曜日

12月書評の11

新梅田シティでフランス映画「あのこと」。'60年代、フランスでは妊娠中絶が違法だった。妊娠してしまったアンヌは大学の成績が優秀で学問を続けたかった・・。ノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの原作を映画化し、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞。うーん、痛みを伴う作品でしたね。

淀屋橋に近い近代建築でお店も入る芝川ビル、そのベトナム料理店でランチ、ベトナムコーヒーとベトナムプリンのデザート。

建築物のドラマで取り上げられていた船場ビルを観に行って、テナントの古書店、クローディア書店さんへ。しばらく楽しく話し込んだ。こういう時間にはかなり癒される。

クリスマスの買い物して、地元に帰って図書館に。少し時間があり、近くの本屋の奥の喫茶で1時間ほど読書。没頭できるよう、壁に向かい仕切りをした1人席の半数は埋まっていた。本屋カフェらしい🤭

ちょっとカロリーオーバーかなぁと思う日に限って帰ったら地元の名店TSUMAGARIのケーキ🍰があったりする。

気合いを入れて筋トレに励みましたとさ。

◼️柳広司「最初の哲学者」

ギリシア神話や実在の人物をもとにした短編集。大地から生える巨人に焔の息を吐く牛、迷宮のミノタウロス。妖しさに、ワクワクする。

書評で興味を覚えて手にしてみた。ギリシャ神話は、相変わらず体系的には整理してないが、題材となったものは何回か読んでいる。トロイア戦争については神話のほか、シェイクスピア「トロイラスとクレシダ」を今年読み、またソフォクレスの「オイディプス王」も過去読んだのでなじみがあった。

神話や遺文をもとにした1話が短い13篇。大筋に表現と演出を加えたものだと思う。神話らしい残酷な場面も散見される。しかし登場人物を、怪しさ妖しさも含めて活き活きと描いていて、読みやすい。

やはり頭部が牛、身体がヒトのミノタウロスと迷宮ラビリントス、退治するテセウスとアリアドネ、職人ダイダロスとイカロスの翼の話はワクワクする。それぞれアリアドネ、ミノタウロスのモノローグで語られる2篇に続いて、自分が造った迷宮に閉じ込められるダイダロス父と子の物語。流れも良し。

ゼウスがウラノスとの戦いに投入する百手五十首の巨人、コルキスのプリンセス・メデイアとギリシアの若者イアソンの恋物語に出てくる青銅の蹄を持ち焔の息を吐く牛、竜の歯、畑から生え出る武装の巨人たち、また「オイディプス王」の劇中には描かれていなかったスフィンクスとの問答など、異形・不思議、どこか神聖な香りを帯びた者たちが躍動するのは想像力を刺激する。


ソクラテスの逸話を妻の目から描いたのもウィットが効いているし、歴史叙述家のヘロドトスを等身大で動かしたのには、どこかホッとする。


話としては読みかじっていても、なかなかこのような形での小説はなかったのではないかなと。短いので刹那的なイメージと余韻が残り、強く印象づけられる。

やはり神話として伝えられるものには、童心に返りワクワクさせる、突き動かすパワーがあるんだなと改めて思った本でした。

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