2025年1月24日金曜日

1月書評の8

◼️ 「翻訳文学紀行Ⅵ」

在野の研究者が、専門の国の小説を翻訳した短編集。

新しく開拓した古書店さんで扱っていた本。日本ではおそらく知名度の高くない作品を、世界のそのエリアを研究する学者さんが翻訳した本。このⅥでは

・ネイティブ・アメリカンのルーツを持つ女性作家の作品「黄色の女」「雨雲を送る男」
・ハンガリー作家の落語のような喜劇「中央当直にて」
・イスラエル建国の際、ナクバという民族浄化から逃れ、のちにイスラエルに密入国したパレスチナ人が書いた「ワーディ・ニスナースの新しい地図」
・オーストリアの作家の手による「ゴットランド島」からの一章「カインとアベル」〜ちなみにゴットランド島はスウェーデン🇸🇪の島で「魔女の宅急便」の舞台だとか。
・台湾の有名作家の「鉄漿」

どれも、映画で言えば単館系の純文学的な小説で、読者にあれこれ考えさせる篇だ。自らのルーツ、前時代のしきたりや風土風俗を取り上げている。

ナクバは去年のイスラーム映画祭で直接的に取り上げた映画を見た。土地を追われ家族を殺されたパレスチナ人。真に迫る実情が描かれている。

いわばどれも小説的で、進行・意味合いなどそんなに明瞭に書くのではなく訴えんとすることを書いている要素から嗅ぎ取る、タイプの作品。んーよくあるし、嫌いではない。むしろ好きな方だ。

なにより各国の、時代、特有の風土を知れるのは楽しい。パレスチナの小説はさすがに知らないし、国を代表する作家、たとえばチェコならチャペックは知っていても他はなかなか。しかも短編となると余計触れることが少ない。

シリーズ他の巻も読んでいきたい。

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