2025年1月13日月曜日

1月書評2025の4

◼️ 長谷川まりる「砂漠の旅ガラス」

世界は砂に埋まり、文明を知らない人々は掘り返しては意味を考えるー。設定がおもしろく、素直に楽しめた児童小説。

児童小説や絵本はひとつの表現手段であり、浸透するような残滓を残す。読みたいな、と思っていたタイミングで著者の書評を見かけた。読後のいま、これはいいものを見つけたぞ、まだまだ作品あるし、という思いである。くふふっ^_^

人類の文明は滅び、世界は"防腐塵"という人工の砂で覆われていた。人々は居住地の民、旅ガラス、海の民、そして「川の使用料をよこせ」などと言って襲ってくる砂族などに分かれて暮らしていた。

ツバメは半年ほど前に旅ガラスになった少年。黒い服を着て、ひょろっと背が高い。居住地を出て、ミサゴという旅ガラスに拾われた。もう1人、年下で身体の小さいキツツキというまったく喋らない少年と3人で暮らしている。ミサゴは古代人が書き残したものを読むのが趣味だ。

旅ガラスや居住地民は防腐塵、温度も上がらず、水も空気も通さない砂を掘り返しては、戦利品を探している。コンビニやスーパーを掘り当てると大量の食糧が手に入り、ホームセンターは道具の宝庫。彼らはバイクとサイドカーに荷車をつないで移動していて、この世界には車もあり、ガソリンの存在は知っているが電気はなくコンセントの意味も分からない。

ある日、ミサゴの一行は旅ガラスが集まる一座に顔を出す。しかし突然砂族の襲撃に遭うー。

なかなか、本格SFのように突飛な設定で楽しくなる。人類の文明のことをどこまで理解しているのか、は少しあいまいめだけれども、海の民、居住地の民、そして砂族、キツツキ、またミサゴにも関係あるアビという旅ガラス、何かの植物の種のようなものはまるで飛行石のように狙われたりするし、ツバメ本人も含めてだんだんと最初の設定の理解が深まっていく物語だ。

なんというか、型にはまってそうでいて、さまざま創作の力が伸びやかに活かされている気がしている。結婚式の作法など細かいところにも感じる。

小学生の頃、SF好きな読書友の影響で、転校しちゃったホリヤくん、元気かなあ、すみません笑、当時読んだ本の、タバコの匂いに超高速で飛んでくるとんでもなく硬いカブトムシ〜人の顔なんかに当たろうものなら致命傷を負う〜というイメージを覚えている。

児童小説というものから受ける印象は色染みがつくようにいつまでも覚えていることがよくある。挿絵も多いからかな。なんというか、通常の小説は、SFでも小難しくて定型な気味があるのに対して、絵本や児童小説はそういう絵が浮かぶような、また特殊な物事が心に留まるような特徴があり、作家さんもそこにこそプロの技を投入しているような気配があるなと考えたりする。

ともかく、私は防腐塵からいい作家さんを掘り当てた。古文書を解読する好青年ミサゴのように読み解いていこうと思う😎

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