2025年1月24日金曜日

1月書評の5

◼️ 恒川光太郎「無貌の神」

抜群のイマジネーション・ホラーで不思議な闇の世界を彷徨う

なじみの古書店で話をしてて、恒川光太郎の「南の子供がよく行くところ」良かったよねーという話をしていたら薦められた本。翌日図書館に行ったらあった。借りないわけにはいかないよね^_^

恒川光太郎の良いところの1つは、信じられないくらい早く読めてしまうところ。あっという間に読み切った。

40〜60Pくらいの短編が6本。表題作は人々が働かずに暮らす集落に少年はいた。アンナという女が面倒を見てくれていた。小寺に光り輝く衣をまとった、顔のない神がいた。その光を浴びれば傷や病気が癒えるため、動物までも小寺に来る。しかし神はときおり、人を丸呑みにした。ある日アンナは短剣を持ち、神に戦いを挑んだー。

神は入れ替わり、食べられる。老婆は神に食べられたい、と思う。この辺、著者の別の作品にもあった、現世を捨てて、別の世界に行ってみたいというほのかな想いも見て取れる。楽園を求める心かもしれない、などと思う。

昔話風で、どこかベタで、それを文明の影も見えるように情報を出し、異世界で展開する。

「青天狗の乱」は江戸末期の流刑地伊豆諸島の孤島での話。明治維新の絡んだ味わいもする。

少女フジが不思議な男、時影の指示に従い何十人もを斬り殺す。それは未来と信じられない繋がり方をしていた。フジの家庭にもう一捻りの味がある「死神と旅する男」タイトルは江戸川乱歩のパロディだろうな。恐ろしくも小気味いい結末。

出口のない「十二月の悪魔」に人に乗り移る風人、の自己犠牲的な哀しさ。

ラストの「カイムルとラートリー」は純然たるファンタジー。児童小説っぽくもある。

きっと色んな知識を溜め込み、多くの引き出しがあるのだろう。しかし感じるのはやはり伸びやかさ、というか発想のいい方向への飛躍だな、と思う。そして絶望感、心地よさ、閉塞感、入れ替わり立ち替わり現れるプラスマイナスの要素の演出の具合も好ましい。ライトホラーの雰囲気の中に入っているものが斬新でかつ納得感まであり、ゾクゾクする。

オキニですな。また読もう。

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