2024年5月26日日曜日

5月書評の9

◼️ 阿部絢子
「ぶらり、世界の家事探訪 ヨーロッパ編」

家事にテーマを絞ったというタイトルに惹かれるものはある。

これはたしか「古書店でよく売れている本」というテレビの特集で、ある店主さんが挙げていた本。たしかに、旅や現地での交流で料理を紹介する、もしくはホームステイ先の暮らしを記すということはあっても、家事、で軸を作る本というのはちょっと興味深い。ヨーロッパ編だから想像でき、たぶん真似したくもなってしまうだろう。

著者は現役の薬剤師で家事や生活に関する本を出している。で、家事を覗いてみたい、と各国にショートホームステイ(1週間ほど)する活動を始めたのは48歳からで、70代後半の執筆時現在でも続けているらしい。行動派、エネルギッシュである。ふむふむ。

フランスのナント、ポーランド・トルン、フィンランド・インゲルマニンキュラ村、ノルウェー・トンスベルグ、イタリアのジェノヴァ、スペインのマドリッドなどでの体験を綴る。

日本の国際生活体験協会という機関に申し込みホストファミリーを決めてもらう手続きをするそうだ。マッチングがあるのだろう、多くは、子育てが終わっている家庭である。

町に近いナントから、自然豊かな北欧まで。土地土地の風情と料理、買い物などいわゆる旅味的なものからキッチンのごみ処理、洗濯など暮らしぶりの視点まで、軽いタッチの記録。

年配のご夫婦もしくは独身者の生活ぶりには年齢特有の割り切り、思想も見られる。中にはビジネス夫婦もいて、時間を大事に毎日を組み立てていたりしてバリーエション豊か。やはり北欧は福祉も手厚くて独特だ。地元もせめて図書館もう少し立派にならないかな。

さて、著者はつぶさに見てきたヨーロッパの生活をもとに総括する。家事男子にフォーカスしたりして時代観も見える。筆致の割り切りはいっそ気持ち良いほど。聞くのを忘れた、スポーツには興味ないから、アイロンはかけない、などなかなか正直で赤裸々。ややふりかぶり気味ではあったけれどもまあ、サラサラと読み終えた。

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