2024年5月26日日曜日

再5月書評の6

間違えた。こちらが正です。って誰も読んでないけどー😎だからいいんだね。にしては病んだ言葉を吐かないな😌

◼️ ポール・オースター「幻影の書」

追悼ポール・オースター。謎の失踪を遂げたサイレント映画俳優の人生。偶然と創造、映像の叙述。

ポール・オースターは「ムーン・パレス」「シティ・オブ・グラス」「幽霊たち」「最後の物たちの国で」「闇の中の男」と読んできた。今回は読書番組で、芥川賞作家九段理江がおもしろいと言っていたこともありチョイスした。

飛行機事故で妻子を失った大学教授・ディヴィッド・ジンマン。絶望感のさなかで、たまたまテレビで観たサイレント俳優・監督のヘクター・マンの作品に興味を惹かれる。ヘクターは短い期間ハリウッドで名を成した後、突然失踪し、いまだ行方は分かっていなかった。ディヴィッドは現存する作品を猛烈に研究して本を出版した。ある日、ヘクター・マン夫人と名乗る人物からヘクター本人が会いたいと言っている、という手紙が届くー。

偶然と成り行き、その創造。ヘクターの謎とされている人生は流転を重ねるドラマである。加えてヘクター作品の長い映像描写は、見えない謎へ冷たい鍵や過去の遠さ、さらにはヘクターの人生ドラマを支えたり効果を加えたり、といった色合いがある。のだが、監督・脚本を担当して自作を映画化している著者はその部分、後世の冷静さと、だいぶ熱がこもって少々興奮しているようなものが同居している、と思える。

「闇の中の男」でも日本の小津安二郎の作品を長く熱く語っているシーンが目立っていた。読んでて少し微笑ましくなってくる。

人生の謎の期間が伝聞形態で語られる時、そこには独特の深さと月日を感じさせる彩りが加わる気がする。もちろん小説とはそもそもそういった性質を備えているものではある。ただ、今では推しはかり切れない出来事を、伝聞という形でもうひとつフィルターをかける手法には特有の陰の部分があるのかもしれない、そしてやはり劇的でなければいけない。少々偶然、過剰演出かな・・という感もよぎったりするけども、人間の壊れた部分、また常識通りにはいかない、理解できない点を創造しているのはストーリーテリングの妙と取るべきかなと。人の行動心理は不思議な面も多いし。

最近でいえば平野啓一郎「ある男」もそんな感じだった。

ロマンス、セックス、悲劇・・地域性含めアメリカ、を感じさせる作品でした。また読むだろう。

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