◼️ 斉藤倫 junaida「せなか町から、ずっと」
童話集。海に浮かぶ大きなマンタの背にできた町。せなか島のせなか町、不思議なお話。
斉藤倫は「ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集」に感銘を受けた。「Michi」「の」などの作品で人気の高い絵本作家、画家、junaidaと。これは無視できない取り合わせだと読むことにした。
大きな大きなマンタ。海の上に浮かんでいるその背には山も川も森もでき、いつしか島と見なされるようになり、町ができて多くの人や動物が住み着いた。そしていくつもの少し不思議なできごとがー。
風があるときは全くはためかず、風のない時にひらひらと揺れるへそまがりのカーテン、突然名前をなくしてしまった元気な女の子、牛を指示通りに動かせる天賦の才ある牛飼い。それぞれが天災や可愛らしい意地悪に出会う。大事な飼い犬をさらわれた幼女の涙はやがて大評判のとなる味を生む。学校には音の鳴らない、奏し方さえわからない、しかし大きな効果を発する楽器がある。
最も長い「はこねこ」では木の根元の箱に潜む猫、はこねこを出てこさせようと町中の人が手を尽くす。ラストでは父を亡くし牛乳配達の仕事をしながら小学校に通う少年の想いがー。
junaidaは表紙絵と挿絵を描いている。前面に出ることはなく、でもところどころにらしさが見える。
可愛さ、やんちゃさ、おもしろさ、にぎやかさに痛快さ、そしてさりげない哀しみに彩られたせなか町の不思議なできごと。そしてマンタは鳥に憧れる。
収まりが良く、楽しい作品でした。
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