2024年5月2日木曜日

5月書評の1

人気絵本作家、画家、京都在住の日本人男性、junaidaの展覧会に行ってきました。連休の谷間、雨風吹き降りの日だからか、けっこう空いてて、ゆったり観られました。画像上げます。

◼️ウィリアム・シェイクスピア
  「ヘンリー四世」

なんと言ってもフォルスタッフ。シェイクスピア作品No1の人気者。しかしま、セリフが多く長い作品。

サー・ジョン・フォルスタッフ。巨漢にして酒飲み、文無し、大ボラ吹き、臆病者、口から先に生まれたという言い回しがぴったりなほどの口数の中身は、皮肉を散らした、また表現の幅として例え話を多用する道化的な人物造形。でもモテちゃったりもするんだこれが。以下娼婦ドル・ティアシートのセリフ。

「ああ、この小っちゃなごろつき、可愛いったらありゃしない!(中略)ああ、いけない人、大好き!(中略)ああ、この悪党!」

王・ヘンリー四世の嫡男にして皇太子ハルはフォルスタッフを含む荒くれ者たちと付き合い、王を心配させてばかりいた。ハルはフォルスタッフたちの強盗団に加わると見せて抜け出し、金品を手にしたところへ、もう1人とともに変装して襲い掛かりあっさりとお宝を得る。その後酒場で、すぐに逃げ出したフォルスタッフの説明を聞くと、4人の旅人を脅して奪ったことを、やはりというか、100人を相手に大立ち回りをしたとホラを吹き、その後現れたハルたち2人のことも最終的に14人と勇敢に戦ったようにベラベラとしゃべる。ついに王子がネタバラシをすると実はお前だと分かってた、王位継承者を殺せないから逃げた、などと言い訳をする。口は悪くて強気、反面意気地はない、しかし憎めないキャラクターぶり。シェイクスピアものの登場人物のなかでも大人気らしい。

本筋は、王ヘンリー四世は前の王リチャード二世から王位を簒奪、リチャードが王位継承者だと指定していたモーティマーを擁護するノーサンバランド伯やその子ヘンリー・パーシー、あだ名はホットスパー(向こうみずな人の意、ちなみにサッカーチームのトテナム・ホットスパーはこのヘンリー・パーシーから取ったらしい)らと対立する。ノーサンバランド伯は各地の反抗勢力と結びヘンリー四世の国王軍に対抗するものの、反乱軍はまとまらず戦いは国王軍が勝つ。フォルスタッフも王子の軍で役につく。

ヘンリー四世はやがて崩御、ハルが後を襲いヘンリー五世となる。ハルはごろつきたちと付き合っていたのは世間を欺くためだとし、フォルスタッフたちを断罪、追放する。これはどうやらシェイクスピアもの的大事件らしい。

ウェールズ、スコットランドにそれぞれ反抗勢力がいて話はブリテン島ほぼ全土に及ぶ。スケールが大きく、フォルスタッフ以外にもハルやホットスパー、ウェールズの豪族グレンダワーなど個性豊かな登場人物が出てくる。物語自体は430ページ程度とシェイクスピア戯曲としてはかなり長いもの。ただ壮大な成り行きのためというよりは、どうもフォルスタッフという人物の長セリフがホントに多く、彼の個性を大いに表出させるため長くなっている気がする笑。

シェイクスピアは最初期に「ヘンリー六世」を書き、この「ヘンリー四世」は円熟期の作品とされている。前後の物語「リチャード二世」も「ヘンリー五世」も作品となっている。この1300年代後半から1400年代前半あたりの歴史にはこだわりがあるような・・現代日本から江戸時代を書くようなものかな、なんて考える。ちなみにハル、ヘンリー五世は即位後百年戦争を再開させ、ヘンリー六世の治世下では薔薇戦争が勃発している。

まあともかく、ホントかどうか、人気者フォルスタッフについては「ヘンリー四世」を観劇したエリザベス女王が、フォルスタッフを気に入ってしまい「あの男に恋をさせよ」と命じたためシェイクスピアは直ちに「ウィンザーの陽気な女房たち」を書いた、という伝説があるとか。この作品は女たちがフォルスタッフをコテンパンにからかいやっつける話です。

今回は大いにフォルスタッフを堪能した。歴史物語じたいはつながりをもう少し把握したく、「リチャード二世」も読もうかな。しかし長かった。「ヘンリー六世」はもっと長いし、晩年に先送りしようかな、なんて。

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