2024年5月7日火曜日

5月書評の3

◼️ 「手塚治虫名作集6 白縫」

設定にワクワクするライトホラー、SFの作品集。マンガでしかありえない手塚治虫。そこがやっぱりイイ。

昭和43年から50年までの読み切り作品を集めた企画シリーズ。手塚治虫が好きでよく読んでいる私にしても初めて読むものばかりだった。

開発を進める兄と、かつて故郷の浜で見た白縫の火が見えず、環境破壊に反発する弟。そこへ不思議な少女が現れるー(表題作)

ほか、へそのスイッチを押すと爆発する原爆を女外科医が田舎出のゴスケの身体に仕込む「ブタのヘソのセレナーデ」、「コラープス」では力押しの侵略を進める古代リディア王国のニキアス将軍が占い師のこの戦は不吉だとの予言を無視、悲惨な運命を辿る。

「月と狼たち」では地球を脱出したルンペン2人が別々の宇宙人に拾われ、激しい戦闘訓練を受ける。

「ヤジとボク」は高度な知能を得たネズミの話、「シャミー1000」は人間を支配できる能力を持つ猫に似た生物のエピソード。

掲載されたのは週刊、月刊の「ジャンプ」と「シャミー1000」は半年にわたり「高1コース」に集中連載されている。

どれも面白いけれど、私的にはラストの2つかな。医学的だったり科学的だったりしていることに加えて「シャミー1000」は強い超能力を持つ合理的な種族、シャミーがネコ人間の愛情の研究を担当したりといかにもドタバタコメディとして楽しめそうな前提だし。

突飛な設定もむしろしっくりくるような気がする。メインストーリーをつなぐ流れも、登場人物も、かなりマンガ的だと思う。洗練されてはいないが昭和的なテイストが、どこかストンと落ちる感じ。リアルな理論がなく、うるさくない。

私は数年前、宝塚の手塚治虫記念館でバイプレーヤー特集企画を見た。アセチレン・ランプとかハムエッグが出てきてるのを見ると、楽しくなる。手塚治虫の作品を再読、初読していくのもライフワークやね。

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