◼️ 小野雅裕「宇宙に夢はあるのか」
いや〜なんて楽しい本だったか。火星探査運用チームの方、惑星探査の、まぎれもない最前線。ワクワク!
著者はNASAのジェット推進研究所(JPL)で火星に着陸し移動しながら調査を行うローバー、パーサヴィアランスの運用に携わっている方。土星の衛星で地表の分厚い氷の下に液体の海を持ち、表面では氷の割れ目から蒸気を吹いているエンケラドスの、その割れ目の穴からヘビ型の探査機を潜り込ませて生命の兆候を探ろうとしているチームの主任研究員だ。
この本では惑星・衛星探査の最前線を知る著者が、宇宙探査のスタート、アポロ計画、さらに惑星探査の歴史と述べていく。
惑星探査の話は好きで、webで調べたりしてたので今回、より正確な解説の形での記述をかなり楽しめた。ソ連は一時期金星にこだわって、実は何度もの失敗の末金星に着陸して写真も撮ってる、とか、2004年、土星軌道に投入されたカッシーニから降下したヨーロッパ宇宙機関の着陸機ホイヘンスが土星の衛星タイタンの地表に到達しやはり写真を残している、とか。ボイジャー1号2号の姉妹、火星では懐かしいバイキングの初着陸や目の覚めるような火星の画像を残した、比較的最近のオポテュニティ、スピリット、キュリオシティら自走ローバーたち。この時点でかなりワクワク、ホクホク。
宇宙で、地球は孤独なのか、次は現代以降、地球外生命、生命の存在を示唆する証拠、バイオシグネチャーを探す活動の話。過去からの積み重ねの話と解説、そして現代の探査の最前線。当事者が語る言葉はリアルで生々しく、想像力を刺激する。
火星サンプルリターン計画、木星のガリレオ衛星のつぶさに調査、大気が濃く重力が地球の6分の1のタイタンにドローンを飛ばすプロジェクトと先々魅力的な計画が目白押し。
また前述のように著者はエンケラドスの蒸気噴出口から内部の海へ侵入する実践研究開発をしている。眼のライトが光っているヘビ型ロボットのイメージ図もあり実に面白い。
最終章は、我々はどこへ行くのか、地球外生命体の発見、文明の進んだ宇宙人と遭遇できるのかを科学的、確率的に説明する。専門的に言うとこうなのか、というのがよく分かる。
印象に残った話①
著者が火星探査運用チームで、1日が地球より40分長い「火星時間」で勤務していた時、夜の休憩時間、夜空に赤く光る火星を見るのが好きだったと。先ほどまでPC画面には火星の大地が映っていた。そのギャップに、想いを馳せる時間。なんか分かる気がする。羨ましい。
印象に残った話②
電波は宇宙に放射される。人類初のラジオ放送は1907年のクリスマスイブ。内容はクリスマス・キャロル。その時の電波はいま118光年先へと達している。通過周辺には1800の星、しかない。しかし時間によりその範囲は広がり続ける。いつか高度な生命体が、キャッチすることがあるんだろうか、という話。
宇宙の時間軸は長い。子供の頃、当時惑星だった冥王星の外側に海王星が入り込み、20年後くらいにまた内側に入ったこと、また公転周期約165年の海王星は1846年に発見されてから2011年にようやく公転軌道を一周したこと、いずれもニュースで見たり読んだりした。太陽系ですらこのスケール感。そうそう短いスパンでは何も解明できない。そもそもが地球以外の星の岩石は月と、イトカワ、リュウグウなど少数のものしか得ていない。
そして羨望の眼差しを未来に向ける。ボイジャー計画は、1983年、木星、土星、天王星、海王星が並ぶように近くに来るタイミングで決行された。ボイジャーが撮影した天王星、海王星の写真は以後長らく当該惑星の実写画像として重宝された。次のタイミングは2158年。ひ孫の世代だ。その時こそ人類は進んだ科学力を結集して最大の効果を得るべく大探査をするんだな、と思うと、見たいな・・と思う笑。
心が充実した宇宙本。とても、非常に、大変、ホンマにめっちゃおもしろかった!
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