◼️ 髙田郁
「契り橋 あきない世傳 金と銀 特別編 上」
時はあれから数年がー。男女の情、人のゆくたてと道を描いた特別編。
特別編の書評というのはなかなかムツカシイものがあるなと。当然シリーズを読んだ人にしか分からない部分が多いし、入り込めないだろうでしょうし。
取りあえずシリーズの概要を。今の兵庫県、甲子園球場近くで育った幸さちは大阪・天満の呉服商・五鈴屋へ奉公に入り、やがて持って生まれた商才を認められて3代の店主に嫁ぐ。しかし四代目の長兄は放蕩の末頓死、五代目次兄は切れるような才があったものの強引な手法が災いして失態を犯し、幸を離縁、出奔した。六代目は戯作者を目指していた優しい末っ子で幸が商売を切り盛りするのを見守っていたが病死。
七代目となった幸は観察、発想の力、「売っての幸い、買うての幸せ」というモットーで売上げを伸ばし、念願の江戸本店を構えた。幾多の苦難に耐え、様々な試みを成功させ、幸は寄り合いでも顔役になっていた。江戸に来て十数年、劇中でも、時は流れるー。
まずは五代目・惣次が五鈴屋を出て行ってからのことー。両替商の危機を救ったことから病気がちの一人娘をもらって店を継いでくれ、と店主に申し込まれる惣次。江戸でものし上がる手段としての婿入りだった、はずだったがー。
次は支配人・佐助の恋愛譚。颯爽としたおちかが好ましい。昔の純な恋って、読者層を意識してそうな気もする。そして医師に育てられ五鈴屋に託された大七と、すでに70代も後半となり大阪への帰省旅を持ちかけられたお竹どんの物語。
最後は次の五鈴屋大阪本店を継ぐのが既定路線の賢輔と、幸自身のストーリー。3代に嫁いだ幸には後添いなどの引く手もあったが、もう男はいい、と割り切っていた。さて、どうなるかー。
それぞれに、誰しも身につまされる話かもしれない。商い一徹に生きてきた惣次にふっと差した家族の情という光。でも誰も知ってくれる人はいない、話すこともない。若き日の純情は心に残り忘れたくない、と呼ぶ。家事もする女衆でありながら小頭役として幸の参謀格であるお竹どん。加齢、郷愁と情と、割り切らねばならぬもの。
必要な要素で組み立ててあるのだろう。でも冗長だ。それが、わだかまりと、迷いの深さを示す。
下巻どうなるのかな。行ってみよう。
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