◼️ 隈研吾「日本の建築」
執筆8年。日本のモダニズム建築の歴史を描く「熱」を感じる本。
高名な建築家・隈研吾氏の名前はあちこちで聞かれる。なじみ深い福岡の太宰府には隈さんの設計事務所の手になる木組みを組み合わせたデザインのスタバもある。
テーマは大きく言って西欧的モダニズム建築と日本風との融合の過程、じゃないかなと。20世紀前半、コルビュジェやミースが体現し、グロピウスのバウハウスが研究と実践を推し進めたモダニズム建築。ヨーロッパ留学を経験した日本の建築家には、機能、効率化優先という方向性に疑問を呈する者も多くいて、さまざまな独自の工夫を凝らした。
藤井厚二は特に、場所や環境、歴史などに無関係なのが特徴のモダニズムに対抗して、日本建築にあった柱を消す方法を使ったり、建設会社で培った先端技術、エンジニアリングを取り入れたりした。その上で、当時もいまも神的存在のコルビュジェを堂々と批判したらしい。いいね、その気概。代表作の聴竹居は関西にあるからぜひ見に行って観てみたい。
年代の経過にも沿い、幾人かの建築家を取り上げていく。やはりアントニン・レーモンド、丹下健三、村野藤吾・・特に著者はレーモンドと村野藤吾に私淑しているように感じる。木材、木を多用した設計を手掛けているからというのもあるだろう。
レーモンドは帝国ホテルの支配人や設計者、世界のフランク・ロイド・ライトにスポットを当てた小説で知ったと思う。その作中では方向性の違いを理由に師匠を見限ったような、少々悪いイメージが正直心に残っていた。その後群馬・高崎の個性的な音楽堂の特集をテレビで観て、さらに本作で理解が深まった。丸太の採用、斜め屋根.さらに建築物、家屋に「孔」を設ける発想。とても興味深い。
人呼んで「階段の魔術師」村野藤吾は記事や写真を見るたびいいなあ、と思っていて、まだそんなに作品を観れていない。でも、取り上げられているガラスカーテンウォールに対するカウンターとして使った、乳白色にも見えるガラスブロックを使ったビル前面は、大阪の建築祭イケフェスの時に行って、階段もしっかり鑑賞してきた。増改築の達人とも言われ、コンクリート巨大建築全盛時代にも柔らかさを取り入れたとのことで、読んでいて心が躍る感覚。
とても書き切れない、内容の濃さ。分かりやすいけれども時折シロートさんには難しい部分もあった。執筆に8年かけた、その熱量と本気度が伝わってくる。
めっちゃおもしろい本でした!
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