◼️恒川光太郎「スタープレイヤー」
34歳無職の独身女性、夕月が突然RPGのような世界へ転移する。叶えられる願いは10個ー。
最近好きな作家さんは?と訊かれると伊与原新と恒川光太郎、と答えるようにしている。以前北村薫、と言ったら相手から、んーどうしよ、という気配がした。やはり現今話題の作家さんの方が広がる。ホンマに好きだし。
という割には私的にあまり読んでないかも。「夜市」は当然として「南の子どもがよくいくところ」「無貌の神」「白昼夢の森の少女」といったところ。まだ読んでるかもだが思い出せない汗。ほとんどが短編集で、ゾワっとする話が多かったということからすると、この作品は異質な長編かもしれない。
買い物の帰り、斉藤夕月は全身真っ白の大男からくじを引くよう求められ「スタープレイヤー」が当たったと告げられた瞬間、異世界で目覚める。見渡す限りの草原。iPadの小型版のようなもので願いを入れれば叶えられる。代償はなし。ただし10個まで。呼び出せば案内人が出てきていろいろ教えてくれる。
案内人の石松と相談しながら夕月は広大な敷地の邸宅を作り、容姿を変える。しばらくは辺りを伺いながら過ごしていたがある日、別のスタープレイヤー、マキオが接触してくるー。
さて、果てしない世界、叶う望みは10もある。失うものはない。映画俳優や女性アイドルを呼ぶことだってできる。財産も不動産も手に入る。しかも複数の願いを込めたものを1回のカウントで叶えることも可能。夕月は何をするのか・・?また人間の世界である以上、地球と同じことは起きてくる。元の世界では遭遇しないであろう大冒険。まさにロールプレイングゲームだ。
読みながら上橋菜穂子の守人シリーズをもっと庶民的にしたもの、なんてイメージを持った。ような感じ。地図のページもまさにそれっぽい。最近読んだので言えば「後宮の烏」かな。そこへ伊坂幸太郎の突飛でとぼけた味を混ぜたような感じ。
普通の30代日本人女性、が壮大なファンタジーの世界で生死がかかったときに思うこと、行動すること。とてつもなく隔たった環境、状況に身を置くことで見つめ直す自分、成長、実行力、中心となって動く力。
スタープレイヤーや召喚されて住み着いた者たちの来し方、考え方もゆっくりと語られる。やはり楽しい、著者の想像の翼。
続編も出ているとか。興味あるな。主人公の数だけ願いの使い方がありそうだし、別の大陸の新たな物語も出てきそうだ。
正直ちょっとストーリー進行はふむ、決まったパターンかな・・という気もした。ガリヴァ旅行記並みの意外性と深く腹落ちする考え方を期待したりして。エンタメとしては大変楽しめた。
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