◼️ 白川紺子「烏衣の華」「烏衣の華2」
「後宮の烏」後の世界で新しい物語が始まった。若く類稀な能力を持つ女性巫術師と堅物で不器用な許嫁。
1、2巻とも読んだのでまとめたレビュー。借りるに任せるというか、本お貸ししましょうか、と言われるとほぼYESと答え、時間がかかる場合もあるがおおむね全読してお返しする。「後宮の烏」もこの新シリーズも読んでる後輩が貸してくれたもの。ライトノベルも好物です。
霄(しょう)の京師(みやこ)、幽鬼を祓う巫術の名門董家の娘で17歳の董月季(とうげつき)は稀代の力を持つ天才。やはり名門の許嫁で月季の才能にコンプレックスを持っている封霊耀(ほうれいよう)とともに異常な現象の解明に挑む。
1巻は行楽地にして歓楽街のある島、楊柳島を仕切る鼓方家からの依頼で幽鬼の調査をする。なんと、鼓家の人間が次々と死に、その幽鬼が現れて次の犠牲者を指差すというコワい展開。
2巻は人をとり殺すという香炉の話で、なかなか祓えない美しい女の幽鬼の身元を調べに家のある村に行ったところ化け虎が出て困っていると相談を受けるとという流れ。
まずキャラ付けが絶妙な気がする。月季は美貌、聡明で行動力があり、霊耀のことを好いている。月季の気持ちに気づかない真面目で堅物の霊耀は座学は得意だが自分に巫術の才がないことを知っていて、劣等感が先に立つ。そこに物語中に出てきた同年輩の鬼鼓渓(きこけい)、最も庶民的でやや粗い性格の者を仲間に加える。この渓は、「光る君へ」での毎熊克哉のイメージを思い出す。
よく調べているし世界観の構築も緻密。前作に変わらず甘味スイーツもアクセント。安心して読める。そして今回、上手いなあ、とその文章に感心してしまった。さらりと平易な言葉を使って、短文で書く部分をしばしば見かけた。短くすると味が出る。長文はなんでも説明できるけど、短文で書かれたものはリズム感があり、ムダがなく、ウザくなくてすっと入ってきやすい。アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」には、短文で、たったあれだけの文章を積み上げて、ものすごい物語を作ってるな、と思ったものだ。
アガサほど極端ではない、というか意識もさせないくらい、長くない文章でさらり、さらりと描く。セリフも実に自然かと思う。謎の完全解明に至ってない感じにちょっとモヤモヤ感。でもまあミステリではないし後日談があるかもだし、先々期待だ。
取り憑いたものが攻撃してくる者たちを襲って殺してしまう、というのは上橋菜穂子「守り人」シリーズにもあったかな、と
続きも貸してもらおう。
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