2025年3月31日月曜日

3月書評の11

◼️Authur Conan Doyle
"The Adventure of Shoscombe Old Place"
「ショスコム荘」

ホームズ短編原文チャレンジ49作め。あと7つ。積み重なったなと。

第5短編集"The Case-Book of Sherlock Holmes"「シャーロック・ホームズの事件簿」より。1927年4月に掲載された、ドイル最後のホームズものだそうです。

最も晩年の一篇。まあ正直に申し上げるとなんだかな〜という結末にはなってます。前置きが長くなりますが、いかにプチシャーロッキアンといえども短編全部の成り行きを記憶しているわけではなく、実際私はこの物語、たしか馬が出てきたな・・というくらいで詳細を覚えていませんでした。

さて、飛ばしていきます。

"By the way, Watson, you know something of racing?"
"I ought to. I pay for it with about half my wound pension."

「ところでワトスン、君は競馬には詳しいかい?」
「だと思うよ。傷痍軍人の年金の半分ほどを注ぎ込んでいるからね」

ワトスンは、読者の多くがイメージしているように謹厳、実直、忍耐強い(ホームズに振り回されたりからかわれても耐え、気遣いをする)、執筆力がある、勇気がある、などのほか、三大陸で多くの女性を見てきたと豪語するなど女性に敏感で優しい、戦場体験により少々むさ苦しい生活でも耐えられる、ずぼら、などの特徴があります。この言葉も投機やギャンブルに関心がある、という一面を表していて、シャーロッキアンものの本などでよく取り上げられます。

ではサー・ローバート・ノーバートンという人物は知ってるかい?とホームズが問うと、ワトスンはすらすらと答えます。

サーは准男爵、しかし荒っぽい、危険な男で向こう見ずな騎手、ボクサーにしてスポーツ万能、多くの女性と浮き名を流したこともある独身。馬用のムチで高利貸しを打ち殺しかけたこともあるとか。ショスコム・オールド・プレイスという屋敷に住んでいて、厩舎と育成施設を持っているが現在は困窮している。

ホームズの質問には理由がありました。サー・ロバート厩舎の調教師、メイソンから相談の手紙が来ていたのです。

サー・ロバートには未亡人の妹レディ・ビアトリスがいて、屋敷一帯は亡くなった夫のものであり、一代限りの不動産地代で暮らしているとのこと。2人は同居していて、弟サー・ロバートは妹の収入に頼りっきりで、食い物にしているであろうこと。ビアトリス未亡人は高血統のショスコム・スパニエルを飼っていることなどがホームズの口から語られます。

ほどなくメイスンが現れました。背が高く髭を剃り上げ、多くの部下を統率している風格がありました。

"First of all, Mr. Holmes, I think that my employer, Sir Robert, has gone mad."

「何よりもまず、ホームズさん、私の雇い主、サー・ロバートは頭がおかしくなったのだと思います」

メイスンによればサー・ロバートは次のダービーでなんとしても勝つ必要がある、借金で首が回らない。厩舎にはショスコム・プリンスという素晴らしい馬がいる。彼はその馬での一発逆転を狙っている。ずる賢いサー・ロバートはショスコム・プリンスの異母兄弟でそっくりな馬を出走させてオッズを下げている。

はっきりとは文章に書いてませんが、ショスコム・プリンスにそっくりだけども遅い馬をショスコム・プリンスだと偽ってレースに出し、わざと負けさせた結果、次のダービーでのショスコム・プリンスの掛け率は下がっている、つまりその状態で本物のショスコム・プリンスを走らせて勝てば、ダークホース、穴馬が勝ったことになり、賭けていたサー・ロバートには大金が転がり込む、ということみたいですね。そうでなければ破滅ということです。


さらに重ねてメイソンが言い募ることには、彼は目つきが異常でレディ・ビアトリスへのふるまいがひどい、と。

2人はかつては仲の良い兄妹で、はビアトリスも馬を愛し、馬車で彼女が厩舎に行き馬に角砂糖をあげたりしていた。馬もよく懐いていた。しかし最近はめっきり興味を失い素通りになった。兄妹に諍いがあったようで、なんとサー・ロバートはそしてビアトリス自慢のショスコム・スパニエルを3マイル離れたところで"Green Dragon"という宿屋をやっているバーンズ老人にやってしまった。

犬・・「バスカヴィル家の犬」といい、この話と同じく競走馬の物語である「名馬シルヴァー・ブレイズ」でポイントとなった犬といい、はたまた「四つの署名」「スリー・クウォーターの失踪」の臭いで追跡する警察犬のような犬といい、犬はドイルにとってキー・アイテムともいえる存在に思えます。

メイソンが言うには、レディ・ビアトリスは水腫を患っていた。かつて兄は妹の部屋に行って長い時間過ごしていたがいまはそれもなく、気に病んだ妹は浴びるように酒を呑んでいる。

ビアトリスには何年も仕えているメイドがいる。このメイドはどうやら伊達男のサー・ロバートと・・らしい。

"But then, again, what is master doing down at the old church crypt at night? And who is the man that meets him there?"

「しかし、その上、私の主人は夜中に古い教会の納骨堂なんかで夜中に何をしてるのでしょうか。そこで会っているのは誰なんでしょう?」

だんだん話がおもしろくなってきたと、ホームズは両手を擦り合わせ、先を促します。

主人が出て行くのを見たメイスンは、執事とともに後を追った。敷地に崩れかけた礼拝堂があってそこに地下納骨堂がある。そこへ入っていっている。チャンスがあり、サー・ロバートに気づかれないようにして会っていた男を見たが、黄色っぽい顔をした知らないやつだった。

執事と昼間に納骨堂に行ってみたら、そこにあった千年くらい前のものと思われるミイラ化した頭部と骨の一部があった。以前にはなかった。サー・ロバートは棺から遺体を取り出していると思われる。

メイソンはさらに、持参した黒焦げの骨のかけらを見せました。ビアトリスの部屋の下にある地下室に、屋敷全体の暖房のための炉があり、そこの灰をかきだしていた使用人が見つけたものだと。暖房炉は長く使われていなかったが最近サー・ロバートが寒いと言い出して火を入れることになったとのこと。ワトスンは一見して人間の大腿骨の一部だと判断します。

さて!ホームズとワトスンは自然豊かでいい釣り場もあるというショスコム荘の近く、サー・ロバートがレディ・ビアトリスのスパニエルをやったというバーンズ老人の「Green Dragon」へと釣り客を装って出かけます。

宿で釣りの話をしているとバーンズ老人が話に加わってきました。

ホール湖でカワカマスは釣れるかな?というホームズの問いに対して、そりゃ釣れるけど、近くにあるサー・ロバートの庭園に近づくと湖に放り込まれかねないよ、予想屋を極端に警戒してるから、と警告されます。

翌日、仲良くなったバーンズ老人にスパニエルと一緒に散歩する許しを得て、いざショスコム荘。庭園の門のところにやってきました。バーンズ老人によれば、レディ・ビアトリスは正午ごろ馬車でここから出る、と。

ホームズはワトスンに、門番が開門するときは馬車は速度を落とすから、門から出たところで御者に何か尋ねて、馬車をいったん停めるよう頼み、自らは茂みに隠れます。やがて亜麻色の髪の化粧の濃い若い女性と、顔から肩までショールを被った身体の弱そうな年寄りを乗せた馬車が来ました。

手筈通りワトスンが馬車を停めた瞬間、ホームズはスパニエル犬を放しましたー。

With a joyous cry it dashed forward to the carriage and sprang upon the step. Then in a moment its eager greeting changed to furious rage, and it snapped at the black skirt above it.

スパニエル犬は嬉しそうに吠えて馬車へ駆け寄り、ステップに跳び上がった。もとの主人に嬉しさいっぱいで擦り寄ろうとした犬は、しかしたちまち激しい怒りを示して、目の前の黒いスカートに噛み付いた。

早く出せ!耳障りな声がして馬車は走り去りました。声はショールに包まれた男性のものでしたー。

午後は本当に釣りをして2人は自分たちの夕食となるトラウト、鱒ですね、を釣り上げました。夕食後、訪ねてきたメイソン氏と落ち会い、いよいよ納骨堂へと向かいます。

半分崩れかけた納骨堂の地下室に、ホームズのランタンの光の帯が走ります。王冠やグリフィンの紋章、飾りの古い、ふるい棺が多くありました。メイソンが見たと言うミイラの骨は・・なくなっていました。メイソンは驚きましたがホームズには想定内だったようで、例の炉で、灰になってるでしょう、と。

メイソンはまもなくサー・ロバートが帰ってくるため厩舎へ帰りました。ホームズはこの納骨堂、墓場を入念に調査、入り口近くに立てかけてある棺を調べていた時、

I heard his little cry of satisfaction

ワトスンはホームズが小さく満足そうな叫び声を上げるのを聞きます。

目的の棺を見つけたのでした。慎重にふたをこじ開け、中身が見えるかという時ー

上を誰かが歩いている音がして、やがて巨大な身体、荒々しい態度、ランタンの光が口ひげの濃いたくましい顔と怒りのこもった目を照らし出しました。すぐに轟くような声が。

"Who the devil are you?"
"And what are you doing upon my property?"

「お前らは誰だ?わしの土地で何をしとるんだ?」

重そうなステッキを振り上げ、にじり寄るサー・ロバート。しかしホームズはひるみません。

"I also have a question to ask you, Sir Robert,"
"Who is this? And what is it doing here?"

「私もうかがいたいことがありますよ、サー・ロバート。これは誰ですか?そしてこの方はここでどうさせられてるんですかね?」

いかめしい声で言うと、ホームズはくだんの棺のふたを引き剥がしました。中には頭から足まで布に包まれた死体があり、恐ろしい魔女のような崩れかけた顔と淀んで動かない目。

なぜ知ってるんだ、お前に何の関係があるんだ、というサー・ロバートの態度。ホームズは名乗り、法を守ること、それが自分の仕事で、あなたにら釈明することがたくさんあると思える、と言うと、疑わしいことは認めるが、やましいことは何もしていない、屋敷で話そう、とサー・ロバートも折れます。

サー・ロバートは夫婦だという男女を連れていました。あの、馬車に乗っていた若い女性と、こそこそした態度のネズミのような顔をした小男。説明されてないらしく、女性は何をなさっているのか本当に分かってます?と突っかかり、男は、すべての責任を完全に拒否する、と吐き捨てます。

サー・ロバートは渋い顔をしながら説明します。1週間前、患っていた水腫で妹が死んでしまった。自分は生活費を妹の地代に頼り切りで、死んでしまったら収入はなく、高利貸したちが押しかけて厩舎もなにも差し押さえてしまうだろうから、事実を隠し、ダービーまで、そこにいるメイドの夫に妹のふりをしてもらうことにした。彼は役者をやっていたことがある。

妹の遺体は地下納骨堂に運び、棺のひとつを空けてそこに入れた。中に入っていたミイラは炉で燃やした。はるか昔から祖先が眠る納骨堂だから死者への冒涜ではないと思った、と。

ちょっと都合よいふうに聞こえたものの、事実を警察に知らせることで手を引いたホームズ。

結局のところ、遺体の取り扱いは当局からはやんわりと咎められたに過ぎなかった。借金取りたちはダービーまで待つことにしたようで、サー・ロバートは最大の賭けに勝ち、見事に借金を完済したというのが結末です。

うーん、イギリス国内で人気の競馬の話題に、幽霊地下堂と、不気味な効果はついているため興味はひかれますが、結局は大いなる茶番で終わってます。そもそも別馬を走らせてオッズ下げるなんてしていいのか、とモヤモヤするし、英文と訳を読んでいても、描写が読み取れなかったりして、すっきりしない感じですね。

ただ、ネタを分かって後でストーリーを遡るとかなり明瞭に奇妙な動きの理由が分かる話ではありますね。

以上ドイル最後のホームズ物語、幕ということで・・。

2025年3月30日日曜日

卒業・・

春は旅立ちの季節。今年も何名もの先輩方をお見送り。うち1人は7年同部署でのお付き合い。ピアノ奏者で、仕事の合間にピアノ演奏の薫陶を受けるのが楽しかった。巡り会う時は花びらの中、別れゆくときも花びらの中。桜まだ撮ってない😅

Forget-you-not
送別ランチを掲載して、忘れないように。

何も入れない週末。フィギュアスケート⛸️の世界選手権ではマリニンが神って鍵山優真も2位にがんばるわ、⚾️ドジャースはサヨナラ勝ちするわ🏀Bリーグの千葉vs川崎では瀬川琉久と米須玲音の新進人気PG対決があって🏀女子Wリーグのクォーターファイナルがあって、忘れちゃいけない日本の⚾️プロ野球、ライオンズは連敗するわ🦁😢

合間に筋トレしてマンガ読んでクラシック音楽を聴いて・・今日のヒットはソリスト五明佳廉(ごみょう・かれん)さん、ブルッフのヴァイオリン🎻協奏曲。やあっぱ大好きやわこの曲。自然と高揚するフレーズ。カッコいい。クラシックって時にカッコいいよ。ほんま。

いま🎹ロン・ティボー国際コンクール、ピアノ部門が開催されてて、公式YouTubeで主にアーカイブを楽しんでいる。セミファイナルが終わり、いよいよ明日5名のファイナリストによるコンチェルトでの最終決戦。唯一の日本人神原雅治くん、応援してるよ、がんばれ👊

寒の戻り、炬燵に座って過ごす長い午後は忙しい。

LIONS、打て打て打て、打たんと勝てんぞホームやぞ🔥

2025年3月29日土曜日

3月書評の10

通勤路定番のハクモクレン。桜🌸もチラホラ。

◼️「ゼロからわかる北欧神話」

進撃の巨人にも世界観が使われたという北欧神話。まさにゼロから触れる。神話っぽくてGOOD!

ギリシア神話は星座ともあいまって断片的に知ってて、でも体系的な知識とはなっていない。神話って生死が過酷で、不思議さと不可解さがあって人間的で生っぽい。出演人物が多くてごちゃっとしてる。日本神話もそうだよね。

また別の話、子育て中に、例えば四神とか、ケルベロス、ケツァルコアトルなどギリシア神話やアステカ神話などから取られた名称が多かったりする。酒呑童子なんかもある。まったく知らない北欧神話に知識の範囲を広げることで、より分かることが増えるかもしれないと興味が湧いて手に取った。

原初の巨人ユミルが誕生、そしてはじまりの神ブーリが生まれる。ブーリの孫にして北欧神話の最高神、オーディンはユミルを殺し、死体から世界を作った。神々と巨人族、小人族と人間の世界。小人族は不思議で強力なアイテムを造るのが上手い。

神話中の悪役で何回も出てくる邪神ロキが暗躍し、ついに神々と巨人族とが最終戦争ラグナロクを始め、魔狼フェンリルは最高神オーディンを飲み込んで殺してしまう。神々と巨人は相打ちとなって世界は滅びる。何名かの者が復活しその後の世界を生き延びる。

オーディンはギリシア神話でいえばゼウスのようなものかと思ったが逸話の中で捕縛されたり、最終戦争で殺されちゃったりと万能ではないんだなと。あれこれと奸計をめぐらしそれはシャレにならんやろ、ということをやったり、金髪が自慢のシヴを丸坊主にしたり、というロキは憎めない悪役。

最強のハンマー・ミョルニルを手に多くの巨人と戦い、ラグナロクの最終戦争では毒を持つ大蛇ヨルムンガルドと死闘を繰り広げた怪力の雷神トール、弓矢の狩人、女巨人スカジ、知恵の泉の番人にして首だけのミーミル、魔狼フェンリルと大蛇ヨルムンガルドの妹で死者の国の女王ヘル、ギャラルホルンで最終戦争を告げるヘイムダルなどのキャラもおもしろい。

エピソードも足だけ見て婿を選べ、とか小人がアイテムを作る材料の1つが猫の足音、だったりとか、神話ならではのヘンさプラスユーモアがそちこちにあり、飽きさせない特徴がある。

初の北欧神話は、最初こそキャラとエピを正確に把握できずちと戸惑ったがだんだん分かってきた後半はまずまず。

島田荘司は「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」で魅力的な巨人ミステリを書いている。その背景がわかるようになっただけでもいいかなと。

ふむふむ。次はローマ神話、アステカ神話も読んでみたいな。

3月書評の9

◼️小勝郷右「花火ー火の芸術」

古い本なんだけど、滋味掬すべき内容。日本人の職人気質がここにある。

大輪の花火は日本が一番、という話は聞いていた。ただ起源はどうなのか、ヨーロッパの王宮から花火を観る、というメディアの描写もあり、世界と日本との違いは何なのか、ということにはかねがね興味をもっていた。1983年という40年以上前の新書。でも読んでいてこう、ワクワクが湧き起こってくるような感覚を覚えた。

火薬は中国で開発され、鎌倉時代、元の襲来時には兵器として使用されていて、日本は未知の攻撃に苦しめられた。火薬の中に石のようなおもりを包み込み、点火してから大きな杓子のようなもので飛ばしたのではないかと見られている。中国から伝わったヨーロッパでは中世の戦争で飛躍的に大砲などの技術が高まる。

記録がはっきりしないとのことだが16世紀のイギリスでは国王の戴冠式などで花火大会があったことがあったらしく、17世紀には研究所も作られたらしい。

日本では鉄砲が伝来したものの花火が確立するのはまだまだ先で、1613年、イギリス人と明の商客が徳川家康に拝謁し花火を見せたという記録がある。著者は筒から吹き出すような花火だったのではと推測している。この時期の花火はまだ外国人が自国の花火を打ち上げていたようだ。

戦乱の時代が収まり、武器転用の需要も落ち着いたからか、線香花火を経て、国内の打ち上げ花火が実現したのは1717年。初代鍵屋八兵衛が江戸の水神祭りの日に後の川開き花火の先鞭となる献上花火を打ち上げてみせた。ちなみに鍵屋の分家が玉屋で、なるほど、あの掛け声はここからか、と納得。しかし玉屋は大火を起こしてしまい江戸追放になったとか。

本を読み進めるに、花火はあっという間に全国に広がったようだ。1731年長野県の清内路では氏神の社殿の改装時に大花火が上がったという。

この後日本の花火師は技を競い合い、花火は庶民に大人気。仙台では見物人が殺到したため橋の欄干が折れ死者が出たとの話もある。日本での打ち上げ花火は木炭を燃やしたもので色も単色の炎色。燃焼力も弱い。ただ、まだ街灯もつかず、夜となると現代よりはるかに暗かった時代、闇夜に浮かび上がるこの「和火」にはちょっと思いを馳せてしまう。花火師は強弱や濃淡に工夫を凝らしていた。

鎖国していた日本に、文明開花で燃焼力の強い薬剤や炎色剤が入ってくると、緑や赤といった色が格段に鮮烈に出せるようになり、一気に幅が広がり、名人花火師が続出した。

花火の構造、作り方も詳細に紹介してある。1つ1つの光のもとである「星」をたくさん作って燃焼剤の「割薬」の中にきれいな円形になるように慎重に並べる。星には途中で色が変わったり、消える前に音を出したりという仕掛けを潜ませる。最高到達点で開き、どこから見てもきれいな円になるように、詰めた全部の星が思い通りに輝くように、そして一斉にふっと吹き消すように消えるように。

花火玉の導火線である親導(おやみち)や、半分に割った玉を貼り合わせて球状にした後さらにその上に貼る紙にもこだわり、研究を重ねる日本の花火師。この時代は手袋もせず不安定で危険な火薬を手で練り込んでいく。花火はテストができないから常にぶっつけ本番。かつミスは許されない。打ち上げも過酷で火花にまみれる。

この花火にかける思い、完成度への執念があるからか、日本の花火は世界一だという。外国では、星の詰め方などがけっこう雑で、円形ではないそうだ。筆者が諸外国で花火を打ち上げた話も壮大ですばらしい。

楽しい読書だった。40有余年を経て、いまの花火師業界はどうなのか、最新の話を読んでみたい気もする。

2025年3月24日月曜日

ヨドコウ迎賓館5

おまけ。テラスのさらに先への階段もくぐるところに遊び心。六甲山系もきれいでした。

ヨドコウ迎賓館4

ラスの入り口もまあ凝ってることこの上ない。ライトは南米の模様も取り入れていて、西洋人が見たら東洋風に、東洋人が見たら西洋風に見える建築だと言われてます。売店で100周年記念Tシャツ買っちゃいましたー😆






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ヨドコウ迎賓館3

4階のテラスは船のブリッジを思わせる細長いスペース、さらに階段を降りて下の階のテラスと繋がっていて、最先端から眺めわたす阪神間の景色が気持ち良すぎます。ポカポカした春の日、サイコーですね。




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ヨドコウ迎賓館2

この細かい明かり取り窓、飾り銅板、幾何学模様を想起させる紋様もいいですね。工夫しててかつシンプル、採光が多く窓が活きてる気がします。




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ヨドコウ迎賓館1

国内に数少ないフランク・ロイド・ライト設計の旧山邑邸・ヨドコウ迎賓館に行ってきました。この時期は125年前に作られた雛飾りが出るんです。明治天皇と皇后の見立て雛もあり時代を感じました。雛飾りは撮影不可とのことでパンフで。ライト建築、大谷石をふんだんに使い船のような外観、特徴のプレーリー形式をも感じる造り、見応え十分!




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日展神戸展4

白い人の絵は東京都知事賞=小池百合子賞。彫刻はかわいらしい作品も。






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日展神戸展3

はい。ライオンにおぼろ花




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日展神戸展2

木立の絵にはホンマうまいなあ・・と感心。右は人を描いた絵の中で印象的な作品でした。




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日展神戸展1

毎年の日展神戸展。日本画、洋画、彫刻、工芸、書の入選作品が一斉に展示されてて見応えあり。エネルギーをぶつけてくるような作品、現代を切り取った絵など観てて楽しい。左オランウータンの絵はホンマ迫力でした。




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2025年3月20日木曜日

おにクル!

先の「みんなの建築大賞」を受賞し最近CASAの図書館特集にも掲載された茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」に行ってきました。建築好き😎

ちなみに一般投票の2位はジブリパークの「魔女の谷」3位はグラングリーン大阪だったそう。

一見して円、丸の造形が目立ちます。真ん中のエスカレーター部分が7階までの吹き抜け。図書館、ホール、プラネタリウムのほかスタジオや集会室、広い1階にはカフェや展示スペースもあります。また子ども図書コーナーのようなところには寝転がって読める部屋もあり、見回るのも楽しい。ヤノベケンジさんの猫オブジェも存在感。

まずは広々とした作りでふんだんに採光され、ベランダも各階にあり、腰掛ける場所がとにかく多い。テーブル&チェアの設置も数があり、読書と憩いの場としてめっちゃいいなと。JR茨木駅から歩いて7〜8分。阪急の駅との間です。

地元にこんな場所があったら本読むために出かけるな、正直いいな、と🤔

茨木市は大江山の鬼伝説の首領、酒呑童子の一味の茨木童子がマスコットキャラクターで、駅前のシャッターなどにも鬼のイラストがありました。名称募集に6歳の男の子が出したものだそう。楽しそうで怖い鬼も来たくなる、という意味が込められてるとか。

茨木童子といえば、京都の一条戻橋で女に化け、酒呑童子を退治した源頼光四天王、渡辺綱に襲い掛かり腕を切り落とされた鬼で、私はこの話が幼少の頃から大好き。去年一条戻橋を初訪問しました。女性の鬼、という見方もあるようです。なあんか縁を感じるな😉

石川県立図書館や佐賀県の武尾市図書館など、オシャレで過ごしやすい図書館は続々と増えている。神戸のKIITOも好きっす。福岡のリバレインも良かった。今度はのんびりするためだけに茨木行こうかな・・とまで思った訪問でした。満足😆

おにクル!2

中央のエスカレーター部分が7階まで吹き抜け。テラスにはデッキチェアも。気分を変えていろんな場所で気分変えて読めそう。

おにクル!

先の「みんなの建築大賞」を受賞し最近CASAの図書館特集にも掲載された茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」に行ってきました。建築好き😎

ちなみに一般投票の2位はジブリパークの「魔女の谷」3位はグラングリーン大阪だったそう。

一見して円、丸の造形が目立ちます。真ん中のエスカレーター部分が7階までの吹き抜け。図書館、ホール、プラネタリウムのほかスタジオや集会室、広い1階にはカフェや展示スペースもあります。また子ども図書コーナーのようなところには寝転がって読める部屋もあり、見回るのも楽しい。ヤノベケンジさんの猫オブジェも存在感。

まずは広々とした作りでふんだんに採光され、ベランダも各階にあり、腰掛ける場所がとにかく多い。テーブル&チェアの設置も数があり、読書と憩いの場としてめっちゃいいなと。JR茨木駅から歩いて7〜8分。阪急の駅との間です。

地元にこんな場所があったら本読むために出かけるな、正直いいな、と🤔

石川県立図書館や佐賀県の武尾市図書館など、オシャレで過ごしやすい図書館は続々と増えている。神戸のKIITOも好きっす。福岡のリバレインも良かった。今度はのんびりするためだけに茨木行こうかな・・とまで思った訪問でした。満足😆

プラネタリウム🪐🌠

おにクルの新しいプラネタリウムには興味津々でさっそく。内容は児童向け、でも宇宙の旅を楽しめました。

2025年3月19日水曜日

3月書評の7

◼️ 小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」

予想外の内容だった。さる著名作家によく似ている。こんな人日本にいたのかと。

柔らかな、しかし、ん?象と?となるタイトル。おそらくプールで泳ぐ時なんらか象に関係した夢想があるのかな、穏やかな現代小説か児童小説っぽいものかなというイメージのまま入ったら、まったく違った。短編集「アンジェリーナ」は読んだことがあったけどこんな幻想的な長編だとは。

途中からこれはポール・オースターにそっくりだ、という気がしてならなかった。最後まで。

リトル・アリョーヒンとのちに呼ばれる少年は成長して巨大化したためデパートの屋上から降りることができず一生をそこで過ごしたいう象の話、壁に押し込められて抜け出せなくなり、ミイラとして塗り込められてしまった少女の話に強い印象を受け、象とミイラを友人として考えるようになる。

少年はプールでバス運転手の水死体を発見し、バス会社の寮を訪ね、庭のバスに住んでいる寮の巨躯の管理人(マスター)にチェスを習う。マスターはスイーツを作り食べるのが趣味で、バスの入り口から出れなくなるのではと少年は危惧していた。やがてチェスに熱中した少年はチェス版の下に潜り込み、マスターが飼っていた猫のポーンを抱いてチェスを指すスタイルになっていった。運命は容赦なく降りかかり、やがて少年は人形に潜みチェスをするようになるー。

チェスを習熟した少年、喪失、大きな傷、旅立ち・・成り行きに任せる中で少年は自らのありたい道を見つけ、家族と、とりまくり人々の善意に辿り着く。

特殊な設定を組み上げ、大人の作為や避けられない別離をベースに、微妙でまっすぐな少年の心を浮き立たせて描写している。また、チェスの世界を掘り下げて物語の重要な背骨としてときにユーモラスに活用しているさまは小憎らしいほどだ。リトル・アリョーヒンにとっての大事なもの、が言葉を超えて実感できる。

妖しさ、怪しさの海底から自然豊かで辺鄙な土地で織りなされる心のケアへ。異世界にも見える舞台装置の転換も鮮やかだ。少年の決断がより映えて見える。

ちょっと離れて見ると、奇妙にも見える少年の人生と判断。しかしそこに描かれているのは理解されなさ、誰にもある、自分にとっての宝物の体験〜それは多くの場合消えてなくなってしまう〜、初恋と傷、人生のハイライト的な生活と、心で感じる善意という、一般的な経験値に敷衍化されている。

哀しく小さな、しかし確かに価値のある、短い人生。幻想的な仕掛けもGOOD。良い読書でした。

2025年3月16日日曜日

3月書評の6

◼️伊与原新「藍を継ぐ海」

海亀とトーテムポール。世代と科学が物語に深みを与える。風格漂う直木賞受賞作。

伊与原新は最近のお気に入り。「月まで三キロ」「八月の銀の雪」と同じような短編集。いまのところ科学と人情を絡めた長くない作品たちのほうが著者のいい形に見える。

とはいえこれまでとはちょっと違う気もする。

・ 「夢化けの島」(山口県萩市北西の島)
・ 「狼犬ダイアリー」(奈良県東吉野村)
・「祈りの破片」(長崎県長与町)
・「星隕つ駅逓」(北海道遠軽町)
・「藍を継ぐ海」(徳島県阿須町)

冒頭作品では島から採れていたという赤土、萩焼きに彩りを与えるものーを探す。恋の予感も漂う一篇。主人公は地学を研究している助教・歩美。2つめの舞台は明治の世、最後にニホンオオカミが捕獲された地。期待通りの展開だ。

3つめは・・長崎市に隣接する田舎町の空き家に灯りを見た、とおばあさんから訴えがあり、調べていくうちに長崎の歴史に関係ある調査に突き当たる。4つめは旭川と網走の間の町で隕石の話。星と近代開拓史。

萩は故郷福岡と隣接していて、萩城跡などは風情ある観光地。昔もらった萩焼はいまも大事にとってあるからその風合いは分かる気がする。この本を渡してくれたのは長崎の友人。大学に入った頃、彼を含めて長崎出身の同期がかなり多くて言葉にも詳しくなった。「どがん」は博多弁と違い、長崎特有だし。懐かしい物語の中心は、長崎の人間には避けがたい悲劇につながっていて、作中で主人公の町役場の男も熱くなっている。狼、隕石、もうこれだけで理系小説家の描く話にワクワクを抑えられなかった。吉野は関西、北海道も一時期休みのたびに旅行した。

どの話ももちろん、主人公が置かれている社会のひずみと、迫るものではないがやりきれない現実が絡められている。プラスして土地へのなじみ、愛情、科学的なアプローチのほか、連綿と続いてきた近代史、世代間のつながりを明示していることで分厚さ、深みが増している。なんというか、芯を新たに作った感じだ。

それが賞にふさわしい風格を醸し出している気がする。

ラストの表題作は徳島の海岸の、ウミガメ。産卵して砂に隠された卵が孵化して、産まれたばかりの子ガメは浜に向かう。主人公は行方不明の姉を持つ少女。星野道夫好きの私はフィールドが北アメリカ大陸北部の、よく読んだ話につながったことにびっくり。悠久の広がり。これまた違う手法だ。伸びやかで、本質的。

興味の喚起と展開の妙、薄くないつながりの描写とロマン、ほんの少しの都合よさ。満足の短編集だった。

天候は荒れる?かも

メロメロ😍です。「35年目のラブレター」長年のファン原田知世がかわいすぎて。泣ける人情物語。ストーリーと知世ちゃんのかわいさにウルウル🥹我ながらこんなことは珍しい。同い年です。

奈良が舞台で、平城宮、若草山、浮御堂、東大寺、ならまちなど分かりやすく背景にしていて風情があった。鶴瓶と重岡大毅は当然として、知世ちゃんも上白石萌音も関西弁けっこう自然だなと😲

きのうまでは暖かく天気も良い感じ。きぼうもよく見えた。きょうは日中も陽が射さず、風もあって外は寒い。あすは雨で荒れるかもだからもー外出やめるかも。1日外出ないのは久しぶり。

さてきょうも言われたしよく言われるのが多趣味ですね、といつあんなに物事をしているの?ということ。しまいに仕事してないとかアンタ実は3人いるでしょう🤷🏻‍♂️🤷🤷🏻‍♀️とかになる😎😆

まあその、思い当たるのは、単独で行動してる時、かなりせかせかしていること。とかく効率を考えて動くし(結局ムダも多い😅)、外食(スイーツ以外😁)はほとんどしない実は。昔先輩に呆れまじりに、歩くのすごく速い、と言われたしで。

平日は帰って晩ごはん→消化するまで読書→筋トレかストレッチ&体幹21時くらいから1時間程度。ここ2か月は22:45からのドラマ「バニラな毎日」を観るため、早く始めて早く終わるのが習慣になった。月水は23時以降にも観たい番組があるから前ずらしして始めてその前に風呂まで入る、てなもんかな。本はバス🚌&電車🚃の中と昼休みに。

休日の外出は午前中だけで終われるのがベスト。美術展や映画はできるだけ朝イチで行く。土曜は病院でリハビリという週課があるのでちとこぼれる時も多いけど。

こう書くと大したことないな😅 趣味の数はもっとすごい人がたくさんいることを知ってる。できる、といえば本を読むことくらいで眺めるのが多い。

とはいえ、そんな日常をまた、けっこう気にいってる?かもね🙃🙂 

チロリアンと山口のういろうは会社&自分へのみやげ、流行りに乗ってしまいましたキャップ。きぼうの日は、満月がきれいでした。

2025年3月14日金曜日

3月書評の5

秋芳白糸の滝と日本名水百選の弁天池。水汲み場でポリタンクに汲んでる人いました。

◼️彬子女王「赤と青のガウン」

古琴之友、いい言葉を教えられた。皇族史上初、海外の大学課程での博士号を得た留学のエッセイ。

赤と青のガウンはイギリスのオックスフォード大学で博士課程を得た学生が学位授与式で着るガウンのことだとか。読んでみようかなと思った理由は実はブックカバーで、なじみの古書店さんで買った紺と紅、スピンも同じ赤でやや厚手、品のいいもの、が今作をイメージしたと教えられ、それならこのブックカバーで読んでみたいと思った。

留学ものエッセイはいくつも読んだかと思う。ロシアとドイツ。奈倉有里「夕暮れに夜明けの歌を:文学を探しにロシアに行く」や青木奈緒「ハリネズミの道」が記憶に残っている。留学はお国柄やその国の若者の顔も見え、日本人の当惑いと没入の感覚がなかなか楽しいと思っている。

今回はシャーロック・ホームズが通ったかもしれない名門・オックスフォード、しかも女性皇族というなかなか読めないもの。

日本美術史を専攻する彬子女王はオックスフォード大学マートン校へ1年間の聴講生留学の後、2回めで博士課程に進む。英語もおぼつかない中での論文また論文執筆、議論の日々。さらに指導教授は大学いち厳しいと言われるマートン校のジェシカ・ローソン学長、通称JRの指導、寮生活、食事、多くの指導教授、友人、交友とそのバイタリティーとパワーは清々しい。

皇族には側衛官という護衛がつくが、ヨーロッパでは当地への送り迎えだけということで、彬子女王は人生初めて独りで街を歩いたり、旅行を経験。宮家での生活やしきたりにも触れられており興味深い。

古い古い歴史を持つ大学街のオックスフォード、やはり直近のイメージはハリー・ポッターのホグワーツ。環境や過ごし方、ルールなどもおもしろい。ただ学究の道の険しさには驚くばかり。大学とは、勉強だけをしに行くところ、とでもいうような課題の毎日に恐れ入る。

その厳しい環境のさなかで培った得難い友人知人たちとの関係が素晴らしく、著者の力のある、ユーモアに富んだ文章からは、彼ら彼女らへの楽しさと、感謝が溢れてくる。

各章の扉の裏、書き出す前のページに例えば「一期一会」のような言葉と解説がついている。そこに「古琴之友」、自分をよく理解してくれる友人のこと、というのがあった。彬子女王は気さくで多才、その魅力と人懐こさを発揮してたくさんの古琴之友を得ているようだ。まさにこの本を象徴しているように思えてならない。

私も最近帰省して、大学の同窓生、古琴之友と会って、そこでしか触れることのできない懐かしい感覚に浸ってきたところ。

やっぱり留学ものは、おもしろい。著者の文章力にも聡明さがにじみ出る。紺と紅、やはり品よく荘厳さを感じる彩り。ブックカバーから始まり気持ちよく読了した。

2025年3月11日火曜日

グルメ2

小倉駅8番ホームの評判のうどん屋さん。
かしわうどんに丸天トッピングで600円。

秋芳洞に行った時食べた山口名物瓦そば。色が目にあやで、ボリュームがあった。

スイーツ

北九州市立美術館の絶景カフェで食べたパンケーキとスコーン。