節分です。冬の間におもち砂糖しょうゆ。だいぶ膨らんだので撮ってみた。オーブンはどうしても焦げ付かないようにアルミホイルをかませるので焦げ目はつかないな。
◼️泉鏡花「朱日記」
魔と色のミクスチャー。とかく色彩が浮かび上がる。さすがだ。
久々に泉鏡花が読みたくなって青空文庫の泉鏡花の多くの作品タイトルを眺めつつどれにしようかなと、とつおいつ、楽しいチョイス。
やっぱり怪しそうな力のあるタイトルがいいよね。やたら海の字あるな、なんて。色の文字が入るとそれだけで期待度が上がる。
ひどい風が吹き荒れる日、年配で小学校の教頭心得、雑所先生が小使いの源助を呼び、小使いの部屋に行かせた少年、宮浜浪吉の様子を尋ねます。色が白くて髪が黒い美少年、源助たちに坊ちゃん嬢ちゃん、と呼ばれている子、は可愛げにかき合わせた襟の中、懐に
「艶々露も垂れるげな、紅を溶いて玉にしたような」
茱萸(ぐみ)をたくさん持っていました。おそらく鏡花の故郷・金沢が舞台と思われるこの雪国では
「蒼空の下に、白い日で暖く蒸す茱萸の実の、枝も撓々(たわわ)処など、大人さえ、火の燃ゆるがごとく目に着く」
という文章。白皙の少年に赤いぐみ。雪国の茱萸。蒼、白、赤と、はや鮮やかで何かを予感させます。ちなみにこの話の季節は5月の半ばです。
前日、雑書先生は山に登っていました。迷ってしまい、夕方の薄闇の中で見たのは赤、無数の猿の赤い顔。そして赤い雨合羽を着て、赤い旗を持った大坊主に会います。闇の中の赤、赤。坊主は物騒な言葉を発します。
一方、浪吉に真っ赤な茱萸をくれたのは、浪吉の死んだ母親の友人という女だった。風に揺れる黒く長い髪には赤い木の実のかんざし、白い頬に水晶のような目をしている不思議な女は
「沢山(たんと)お食(あ)がんなさいよ。皆
貴下(あなた)の阿母(おっか)さんのような美しい血になるから」と言ったというー。
赤合羽の坊主とこの女は同じ災厄の襲来を口にする。もう予想できますよね。
最初は設定的にも色的にも地味だな、と思う。でもどんどん色彩と怪しさが増幅し共鳴していく。いやーさすがですね。ラストも絵画的な感覚があります。
いつもながら細部まですべて分かるわけではなく、特に最初のほう、先生と小使い源助の会話はちと意味が取りにくい。でも独特の泉鏡花風味の土台となっている気がします。独自の感性の発露ですよね。最高傑作とも言われる「春昼」「春昼後刻」も変幻自在の中で印象深い場面、色を、読み手が自然と想像するように持っていってるのではないかと思いました。
魔術のよう。余人を持って変えがたい筆致という気がします。ちなみに絵の入った目で楽しめる本も出てるようですね。探してみようかな。
いつもながら、いいな。読むのが楽しい泉鏡花。また気が向いたら青空文庫しよう。
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