ショパンコンクールの演奏が評判を呼び、現役医大生との二刀流も話題となった沢田蒼梧のリサイタルへ行ってきました。
私も特にコンクール1次のノクターンには感銘を受けていたので興味津々。
ベートーヴェン「熱情」
ラフマニノフ「楽興の詩」
ショパン「24の前奏曲」
というプログラムでした。
意外だったのが、しゃべりがおもしろいこと。マイクを握り、ちょっと早口なそのトークで何回もウケをとっていました。私も思わずはははっと声を出して笑いました。
熱を込めたプレリュードの後、アンコールはまず
ショパン 子守唄
コンクールの演奏を聴いていて思わず唸ったのは、彼独特の甘さ、柔らかさ。生演奏でも感じられました。いや、シロートですけどね。。
アンコール2曲めは「英雄ポロネーズ 」颯爽、敢然とステージを締めくくり、スタンディングオベーションのファンもいて、喝采を浴びていました。まだ学生ながら、見事なコンサートピアニストっぷりでした。
京橋で串カツ、帰宅したら土用の丑の日、うなぎだった。この土日はひさびさにいい天気で、湿度が低く風もあるので涼しめ。星もよく見える。写真中央の光は甲子園球場。
気がつけば盛夏もいいとこ。いまホラー読んでます笑。コロナが早く頭を打ちますように。
◼️ 恒川光太郎「白昼夢の森の少女」
ワクワク、ゾワっとする、広がりが見えた短編集。
夏のホラーもの第2弾は恒川光太郎。「夜市」「金色の獣、彼方に向かう」を読んだきりでしばらく手にしてなかった。当時の特徴は「いつのまにかページ数が進んでいる不思議な作品」。えっこんなに読んだのか、と思う。内容もおもしろくて怖い。けども、どうも広がりに欠けて、続けて手には取らないかも、というややマイナスめの印象だった。
それがまた、東京圏破壊ものはあるわ(焼け野原コンティニュー)、蔦の森に人間が絡め取られ、独特の考え方をする集団になるわ(白昼夢の森の少女)、時代と地域を超える船は飛ぶわ(銀の船)、ものすごくSFのほうに振れた設定の作品が多くなっていて、読んでいてさあどうなるのか?というワクワク感がとても強い状態で読み進む。
書評を見かけたのをきっかけにひさびさに読んでみた。あちこちの雑誌に書いたもの、またアンソロジーに収録された作品を集めたものらしい。雑誌からはテーマと枚数の条件がつくのが普通とのこと。ページ数も長いもの、ごく短いものとさまざま。ライトな篇あり、設定に凝った、考えさせられる篇ありと楽しめる。寄せ集めるとまた別の楽しみが増すということだろうか。当時に比べて作品数をこなし、幅が広がったということだろうか。どちらにしてもこれほどとは思わなかった。
既読ページ数に加速度がつくことは変わらない。どこかなげやりなテイストも同じだなと。
ありそうなパターン、でもやっぱり怖い「傀儡の路地」、先が読みたくなったり、ネタバラシは後、逆さまの状況を楽しむ「平成最後のおとしおな」、また最も特殊なベースの「夕闇地蔵」など最後まで楽しめる。
これは、傑作ではないだろうか?^_^
◼️ 岡本綺堂他「山の怪談」
独り歩きや、行きあう見知らぬ人が、怖くなる。
とても蒸し暑い日が続く中、週末に入手した本が、気がついたら全部妖し怪し系だった。まあちょっと読んでみる季節かなと。
序盤は山の怪異の研究。伝説や聞き取りをもとに天狗や貉が化かすこと、さまざまな怪物について分析する。私の郷里福岡の八女には、山中で人をオラビ殺す「ヤマオラビ」の伝説があるという。おらぶ、は叫ぶ、大声を出す、という意味の方言だ。
アルプスで最良の案内人だと評判の良い男は、空を飛ぶ天狗を確かに見たと言っているそうだ。
「空に奇声をきき、疾風が急に起った。凄まじい羽音と光明の中を「クワッ、クワッ」という鳴き声がした。人々は戦慄してうずくまったが、自分はハッキリと見た。顔面は蒼白であって嘴の鋭い、射るが如き眼光をもつ天狗であった」
同行数人のうち天狗を見たのは彼1人。しかし彼は真面目に語ったという。ぞくぞくしますねー。これは大正15年に聞いた話だとのことで総じてこのパートは古い。でもだからこそ、怪異が確かに存在していたのを助長する。ただのセピア色の時代的効果だけでなく、まだ適切な形で有った、という印象も感じる。
次は物語パートで小泉八雲、岡本綺堂、志賀直哉らの小品が並んでいる。実は御大たちの作品よりも、尼僧1人の山寺に一夜の宿を頼む駆け落ち男女の話、平山蘆江「天井の怪」、やはり山に迷った男が奥深い地にある女独り暮らしの小屋に泊まる「山女」などがおもしろかったかな。
そして、本当にあった話、と思われる、本格的な登山をする文筆家の怪奇話。やはり用語が専門的で、新田次郎の小説を思い出す。この中ではやはり、北穂高への登山途中に軽装すぎる女と出会う沢野ひとし「縦走路の女」。オチが怖い。
前半は少しまだるっこしい感じがしたが、物語に入ってからはスラスラと進んだ。やはり、誰もいないはずの山で妙な音がしたり、変な現象があったり、山で出逢った見知らぬ人が不気味な行動をしたり、まして死んだりする話を読むと、生活の中で人気のない道を歩く時、そんなところで見知らぬ人に会ったとき、さまざま想像して、ちょっと怖くなる。
私がこれまで聞いて読んで怖かったのは、次のような話。2人の男が冬山登山で吹雪に遭い、山小屋に辿り着くが火の気も食糧もなく寝袋に入って震えているしかなかった。ある夜片方の男 Aが、「呼んでいる・・行かなければ」と相棒Bが止めるのも聞かずに猛吹雪の中を外に出て行った。 Aは2日2晩帰って来なかった。3回目の深夜、寝袋でじっとしていふBが、何かの音を聞きつけて窓の方を向くと、暗闇に、 Aの青白い顔が浮かんでいた。Bはあまりの恐怖に凍りついた。ハッと隣を見ると、凍死した Aが寝袋に寝ていた。翌朝吹雪がやみ、Bは救助されたが前後不覚の状態だったというー
これは小学生の頃、子供向け雑誌の怪談特集で読んだお話。吹雪の小屋で電灯もなく空腹で死はすぐそこにある。とてつもない孤独な時にそんな怪異に遭ったらどうなるか、想像するだに怖かった。
今回このタイトルに読む気を喚起されたのも、この話が心に残ってたからかも、と思ったりする。
そこそこ楽しめた本だった。
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