2022年7月2日土曜日

6月書評の7

山形交響楽団の時の来場プレゼントのさくらんぼ。また梅シロップ、レモンシロップ作り、今年も順調。

6月は15作品。なかなかバラエティに富んで面白い月だった。

高校の後輩女子が自身の障害を元に映画を作り、少しずつ公開されている。地元局のドキュメンタリーにじーん。すごいね。「今日も明日も負け犬」です。みなさんよろしく。

フランク・ロイド・ライトの自由学園明日館の番組を観て、やっぱライトはいいなあ〜。武庫川女子大見に行こうかと調べたらコロナで見学休止中だとか。ガクッと。

沖縄復帰50年。ウルトラマンのドキュメンタリーを見た。初期の脚本家の2人、"天才""金星人"と言われた金城哲夫と、堅実派の上原正三、沖縄出身の両者を描いた回想ドラマプラスインタビュー。

金城哲夫は「ウルトラマンを創った男」というルポルタージュを読んだことがある。実写になるとやはりイメージが違うし、存在感、活力は比べ物にならないくらいぐっと増す。

ウルトラマンは幼少の頃好きで、子育てで追体験というよくあるコースを辿った。シン・ウルトラマンももちろん観た。やっぱ心のヒーローやね。

◼️ 高殿円「シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗」

血管の透けた頬、雪のように肌が白く、血のように真っ赤な唇、黒檀のごとく真っ黒で豊かな髪、そしてパライバトルマリンのような瞳。それが、女性版ホームズ、シャーリー。


図書館で発見、シリーズ2作めだけども2020年に出たという情報をキャッチしてなくておっと、と。バスカヴィルと聞いては読まずにいられない。

テンポ良い女性版ホームズ。ワトスンもレストレードもマイクロフトもちょこっと出るモリアーティもモラン大佐も全部女性。そして現代ものです。小ネタにニヤニヤするシャーロッキアン。

ロンドンオリンピック後のイギリス。元軍医のジョー・H・ワトスンは叔母のキャロル・モーティマーが、アメリカの富豪でデヴォン州アルスター市のバスカヴィル家の当主を継ぐヘンリー・バスカヴィルと結婚するというので当地へと出向く。キャロルはジョーに、この土地を出ていくよう脅迫状が来たことを打ち明けた。

「ノッティングヒルの殺人鬼」がアルスター付近に潜んでいることが発覚し、キャロルとヘンリーの結婚式は中止となる。ストーンヘンジまでピクニックに出かけたジョーとキャロルは、グリンペン沼に浮かぶ鬼火に続いて、馬のように大きな魔犬の姿を目撃するー。

ベイカー街でシャーリー・ホームズを管理し捜査の心強〜い相棒である電脳家政婦はミセス・ハドソン、その夫、ミスター・ハドソンは階下で味が抜群のカフェ「赤毛組合」を営んでいる。妹を溺愛する姉、ミシェル(マイキー)ホームズはイギリス政府高官で圧倒的な権力と財力を持つ。またジョーは図らずも軍医として、アフガニスタンに駐留していたのであった。同僚の将校は肉食系女子のイライザ・モラン。女警部レストレードの息子はビリーという。

アルスター市当地の人々は?ヒューゴーが愛犬役で登場、ほかチャールズ、執事のバリモア夫妻、セルデン、ローラ・ライアンズ・・モリアーティの役どころ含め読んでの楽しみということで。。

AIスマホドローンが大活躍する捜査、また犯罪はあまりにも壮大かつ複雑な陰謀で正直ついていけない。ラノベ的マンガ的に大掛かりな展開と、テンポ良く今風、大いにフェミニンな会話を楽しみ、シャーロッキアン的ニヤニヤにいそしむ作品でしょう。おもしろかった。

先日、映画「シャーロック バスカヴィル家の犬」を観た。何回パスティーシュパロディで読んでも、バスカヴィルには惹かれまくるな、きっと一生。マイケル・ハードウィックの「魔犬の復讐」が未読なのでぜひ入手したい今日この頃。

ジョーにはボスコム谷の惨劇にまつわる大きな秘密があるらしい・・まだまだ続編が出そうなので、楽しみにしている。


◼️ 梨木香歩「りかさん」

和風ファンタジック。やっぱり梨木香歩は不思議でなくては。


前に読んだのが残酷な描写含みだったからか、ちょうどリーディングハートが梨木香歩チックなものを求めていたような気もする。何書いてんだか。

ようこはリカちゃん人形を欲しがった。すると雛祭りにおばあちゃんから送られてきたのは古いおかっぱ頭の市松人形、その名も「りかさん」。ところがこの抱き人形、テレパシーのようなもので喋ることができた。ようこはりかさんに導かれ、おばあちゃんの教育を受け、人形の世界の、不思議な会話や人形の記憶を見聞きする。その全ては、人間の動きとつながっていたー。

「月夜に竹林に入ったことがあるかい。地面は枯れた笹の葉で覆われている。風が、こう、ざざーっと吹くとね、四面世界が回り燈籠のように動くのサ」

上は雛飾りの官女の話。この緊張感の表現がいいね。ヒサカキの実、おばあちゃんが作る、すみれの花を散らした豆ごはんの色合い、人形を台から引き抜いた時、お友だちの「すごい、ようこちゃん、アーサー王みたい」というセリフ。桜の樹の老婆、そして、ようこが泣いた時、ピカソの「泣く女」を思い出すこと。なんか梨木香歩に触れてるな〜と嬉しい気分になる。

まるで魔道士のようなおばあちゃん、桜の枝で染色をする。その時、化学染料と違って、植物染料の場合は、どうしてもアクが出る、だから植物染料は少し悲しげだ、それを人間に例えて、ようこを諭す。ここが物語の中心か。

やがてようこは草木染作家への道を歩み「からくりからくさ」に出演するそう。色には興味があって、染織家の志村ふくみさんの本を思い出す。きっと「からくりからくさ」にも植物染めのことが詳しく出ていそうだ。

最後に、これいいなあというラストを引用。ちょっと不思議な世界に、感情がいきすぎているような気もするが、梨木香歩は、心が向くまま描いたものを読みたいと思う作家のうちの1人。「家守奇譚」を始めとする和風ファンタジックものも好きで、今回も良い具合に浸ったかなと。

「生け垣の向こうからさっと一陣の風が吹き、若葉は白い葉裏をみせ、淡紅梅の縮緬はくるりと翻った。
-いい風。
と、りかさんは呟いた」

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