台風直撃か?から始まり、安倍元首相が銃撃され死亡したというショッキングなニュースもあり、なにやら世情騒然とした日々。あすは参院選だ。
カラ梅雨から一転ですぐに水不足、ということはなさそう。また暑くなる。でも暑いということは太平洋高気圧が強くて台風が近寄ってこないので毎年耐える気になる。
銃撃は、いまどき皆スマホを持ってるから、銃弾の発射音も、犯人確保の模様も、凶器さえも映っていて、生々しい報道となった。おそらくこの類い、初のケースになったのではと思う。しかしとんでもない・・。しかも奈良。衝撃的でした。
◼️ アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
「人間の大地」
飛行士サン=テグジュペリの壮大な表現と凄絶な体験と深い思索がここに。
「夜間飛行」を読んだのは何年前だったろうか。正直、重い作品だなあと思った記憶がある。いまは、こちらを先に読んだほうが良かったな、という感慨だ。
サン=テグジュペリはフランスのトゥールーズからモロッコのカサブランカ、カサブランカからさらにはるか西方、セネガルのダカールまで郵便機のパイロットとして飛んでいた。
何千メートルという高度で飛行している光景、雲の中にいる時、上空から見る海、火山、そしてサハラ砂漠。アンデス山脈越えの航路を開拓したり、無数の竜巻が発生している中を飛んだというパイロットの話・・。スケールが大きく、地球という惑星の地形や現象、その描写が想像力の限界を超えそうに迫ってくる。いやー電車のいちばん前に立って見る景色すらおおーと思う小市民には、その詩的な感覚も、異質な大地も夢の境地だなと。アフリカ上空だなんてどんな気分なんだろう。
当時アフリカのサハラ砂漠近辺にはフランスやスペインの支配を嫌うイスラム教徒・ムーア人の不帰順地域があり、不時着した場合、乗員がムーア人に捕まり殺されることも多かった。パイロットには同僚の飛行機が不時着もしくは消息を絶った際、救出に向かう任務もあった。サン=テグジュペリも囚われの身となった僚友を救いに、交渉役のムーア人と共に赴いている。極度の緊張感が伝わる場面。その中普段は降りない、人跡未踏の地に立つサン=テグジュペリは神秘を感じたりする。
小説、創作ではなくて、体験談とそこで思ったこと、振り返って考えたことを、思索的に、また詩的な表現をも用いながらまとめた本だ。郵便機のパイロットとしての初フライト、同僚、先輩パイロットのこと、幾度もの不時着エピソード、スペイン内戦の取材記などが詰まっている。
特にエジプトの砂漠の真ん中に墜落、不時着し、水も食料もなく限界まで歩き続けた「砂漠の中心で」の章は苛烈、凄絶だ。
ダイレクトに接している大きくて刻々と変化していく外界に触れていると、さまざまな比喩、なぞらえるものが心に浮かぶだろう。また加えて、嵐になる先行きがカンで浮かぶ、砂漠を絶望的に彷徨っている時に、一陣の希望の風を突然感じる、というパイロットの本能のような感覚にも惹かれるものを感じた。
パイロットの体験談を読む時、いつもアラスカ上空を飛んだジニーとシリアという女性パイロットの話を思い出す。星野道夫「ノーザンライツ」に載っている。凍ったアラスカの大地と山。
サン=テグジュペリの話は雪のない砂漠が多く、そこには前世紀前半のおおらかさと情勢のきな臭さ、空間的ダイナミックさ、ダンディズムまで漂う。
空の話はいいな、とシンプルに思うのでした。事実が物語。名作だと思います。
◼️三井康浩「ザ・スコアラー」
プロ野球のスコアラーは何を見ているか、どのように伝えているのか。巨人、日本代表のスコアラーがひもとく現代野球。
著者は元プロ野球選手で長年巨人のスコアラーを務め、V2時のWBC、韓国との決勝戦の延長10回、あの劇的なイチローの延長勝ち越しタイムリーで優勝したチームのスコアラーを担当した方。
WBCやペナントレース最終戦で優勝が決まった巨人vs中日の舞台裏などが綴られていて興味深い。
スコアラーは全体の傾向はもちろん、クセを見破ったり、相手投手の狙い球まで提示するなど日々忙しく責任の重い仕事、というのは聞いたことがあった。今作でも監督からさんざん叱責される場面が出てくる。
野球、また選手のどこをどんなふうに見ているのか、という具体論がまたおもしろい。バッターのフォーム改造のヒントを与え、相談に乗る姿が描かれている。
多くのデータから伝えることを厳選し、伝わり方を考えて「言い切る」のは大変なこと。苦労がしのばれる。
WBCのあのシーンの前、いつもは何も言ってこないイチローが著者に
「僕はなに狙えばいいんですか?」
と訊いてくる。状況の重大性がよく分かる。イチローも緊張し、何かを求めたのか。果たして著者はなんと答えたのかー。
巨人と野村ID野球のヤクルトとの情報戦、小さく曲がる変化球の流行とその対策、数々の名選手についてスコアラー目線での見方など、興味を惹く要素がたくさん詰まっている。
新しいチャレンジを含め、著者の文章も確固として簡潔、思考の向き方と取組みには啓発された部分もあった。ちょっとサラリーマン生活に似てるなとも。
野球好き、楽しく読めました。
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