2022年7月2日土曜日

6月書評の6

6月末は、流れるかどうか分からないが10年に1度くらい大出現するといううしかい座流星群。観測時間は早めだったけれども、薄雲が晴れたのが24時くらい。ウィークデーということもあり1時間の観測でゲットできす。大きいの流れた!というLINEが友人から入り、よかったなあと。夏の大三角形がきれいに見えました。


◼️ 櫛木理宇「死刑にいたる病」

シリアルキラーものはやはり陰鬱だなあ。


ちょうど映画が公開されている。本友が貸してくれた。ストーリーが追う心理的なものと対応する犯罪の手口が残虐で、んーまあやっぱり苦手だなと。

筧井雅也は中学生までは優秀だったが有名進学校に入学してからうまくいかなくなり、結局レベルの高くない大学に入って、大きな鬱屈をかかえて過ごしていた。

雅也のもとに、榛村大和(はいむらやまと)から手紙が届く。榛村は、少年少女を監禁し、酷い暴行を加えた上に殺害した連続殺人犯だった。そして、雅也にとっては、かつて少年期に優しく接してくれたパン屋の主人だった。

雅也は拘置所にいる榛村に会いに行き、立件された9件のうち、23歳の女性を殺害した最後の1件の犯人は自分ではない、調査してほしいと依頼されるー。

証言を追って歩くうち、プライドが高く非社交的だった雅也は変わっていく。そして調査の中で、とんでもない疑いが持ち上がり、雅也は激しく動揺する。

ベストセラーとなったピエール・ルメートル「その女アレックス」は抜群に面白かったが、犯罪があまりに残虐で、そこだけはちょっと、でも無いとダメなんだろうなあと思った記憶がよぎった。

解説では、シリアルキラーの描いた絵画展が大好評を博した事実が紹介され、常人の心理にないものに魅力を感じる傾向も記されている。

幼少の頃の悲惨な環境を綴る物語の流れはやはり暗い。しかしてまだ未熟な雅也の心の動きを辿る物語の流れは分かりやすくすっと入っていける。それなりに興味を惹く作品だ。

いやだな、と思わせるのも成功したインパクト。でもやっぱ残酷なのはニガテやねえ。


◼️ 青樹明子
「家計簿から見る中国 今ほんとうの姿」

いろいろな意味で、数には圧倒的な力を感じる。

お金のかけ方とその金額、そして様々な社会問題が紹介されている。14億の人民、その動きの迫力はダイナミックだ。

中国は40年に渡り一人っ子政策を取り続けた。2015年に緩和されたものの、長年の慣習は大きな影響を及ぼしている。

女だと分かると堕胎する、ということもあったため、今中国では圧倒的に男が多くなっている。男たちは少ない女性をゲットし結婚するためにかなり無理をして家を買う。さらに子供の教育に多額のお金をかける。絵画教室にも年間110万円かけたりする。夫婦は通常共働き。それでも家計は楽ではなく、そもそも複数の子を育てる習慣や経験則がない状況で、2人め以降を育てる余裕が無くなっているとか。

そうなると社会は急激に高齢化社会に向かう。シルバー層の消費を狙うのはいまや企業に欠かせぬ戦略であるとのこと。

政府は教育熱にストップをかけるため、なんと宿題禁止令、塾禁止令を突然出し、保護者と教育業界がパニックになったりする。

また貧富の差は異常に拡大していて、芸能界のトップスターは十何億ものギャラを得ている。また人民はその「推し活」に異常にのめり込み、多額の投げ銭や飛行機までもプレゼントし加熱している。政府は「推し活」を禁止、そしてスターを脱税の疑いで摘発するなどして、その名声を徹底的に「封殺」したりする。

「上に政策あれば下に対策あり」で庶民も知恵を絞って対応している面もあるようだ。

一方この権力集中の構図と人民の愛国心は大きな力でもあり、コロナ禍は共産党政府が強い政策を推し進めたことで、諸外国に比べいち早く対応できた、と人民は誇りに思っているようだ。政府の厳しい隔離政策の間を埋めるように働く民間レベルの組織もあった。また不買運動もあっという間に広がる。

なるほど、だからいまもゼロコロナ政策なのか、と合点がいった。また改めてその数の力を感じた気になった。

価値観が違う、のをひっくり返して想像してみることがある。例えば自分が中国人だとしたら、黄河文明からの歴史は古く、国土も人口も世界トップクラス。購買力には魅力があり、軍事力も含め、西欧に匹敵する力を持っている。かなり考え方に影響するようなベースであることは確かかも。

今回いわゆるIT、ICT化、電子マネーの使用については日本とはすでにかけ離れているようにも思えた。

時代が進むのは速くて、国によりダイナミックな風潮があるなあ、と考えた本でした。

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