写真は先日行ってきたスメタナ「わが祖国」指揮者は小林研一郎です。悪しからず。
◼️小澤征爾「ボクの音楽武者修行」
ドキュメンタリーを観て、著作を再読。その人間力に触れる。さよならマエストロ、でも作品は永遠だ。
小澤征爾の指揮した曲、リハーサル風景、インタビューなどがたっぷりと入っている、長めのドキュメンタリーを観た。会見の短い映像以外は観たことがなく、巨匠のリハは貴重なものを観た気になった。YouTubeでよく聴いていた「弦楽セレナード」は第1楽章だけが医師に許された指揮の時間だったことを初めて知った。気持ちが入り込む。
さて、本書は若き小澤征爾がヨーロッパで、アメリカで大活躍する。登場するのはビッグネームばかり。まさに歴史だ。1935年9月生まれの小澤は1959年2月にフランスに渡り、スクーターで各地を走り回った。同年のブザンソンコンクールで1位、翌年アメリカに渡り、シャルル・ミュンシュに師事するためのコンクールで1位となりレッスンを受ける。さらにベルリンでカラヤンの弟子になるためのコンクールも合格してベルリン・フィルでアシスタントとなり、アメリカにいた時期に仲良くなっていたバーンスタインのニューヨーク・フィルの副指揮者に就任する。この間およそ2年半。23歳から25歳。若くして、世界の音楽史を彩る偉大すぎる指揮者と多くの仕事をした。すごいなああ〜と思う。逆に世界を探してもこんな人あんまりいないんじゃないだろうか。
初めての海外がフランス。ヨーロッパで色んなことを感じながら物怖じせず、たくましく前に進む姿はスケールの大きさを感じさせる。特にベルリンは未だ戦災が癒えておらず、でも音楽の街だった。当地の時代感の描写には心惹かれるものがある。
巨匠との修行時代、音楽観、フランスとドイツ、アメリカとの違いからチロルの山奥でのスキー、修道院生活、ル・コルビュジェ設計のモダンな宿舎の生活、現地での邦人との触れ合いなど興味深い。
ドキュメンタリーの中で、小澤征爾は東洋人である自分が西洋の音楽を理解できるのか、という疑問に取り組み、音楽は、その時代のドイツやロシアの人々だけのものではなく、もっと高みにあって、人間なら誰でも感動できる、という考えを示していた。似たような疑問というかコンプレックスのようなものを岩城宏之も著者で書いていたのを思い出す。日本人音楽家には永遠のテーマなのかも。
20代前半でかなりの成功を収めてしまった小澤はこの後様々な経験をし成功するわけで、長年積み上げたものから解答を見出したのかと思わせる。
人懐こい、ユーモラスな笑顔、リハでの指示は明快、良い雰囲気を作り上げているのが伝わる。事もなげに、相当の努力をしているのが本からも見える。
リハでは小澤が指揮棒を上げ、下げた瞬間に弦楽セレナード冒頭、重厚なストリングスの音が流れる。時折り混ぜる「行くぜっ」という言葉がめっちゃカッコいい。
行くぜっ→すぐ上げてすぐ下ろす→重厚音
このテンポと流れが最高。人間力が良い外貌を取って現れる。とてもかなわないけど、少しでも見習いたいものだ。
良い番組鑑賞、良い読書でした。
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