2024年3月17日日曜日

3月書評の6

◼️ 尾上哲治「大量絶滅はなぜ起きるのか」

80%の生物種が消滅した三畳紀末大量絶滅はなぜ起きたのか。分からない、のワクワクさ。

大量絶滅のビッグファイブ、超大陸パンゲアの分裂、三畳紀とジュラ期のさかい目のT/J境界、突然あらゆる生き物が小型化するスモールワールド、消えた二酸化炭素・・見出しや最初の図の言葉を拾うだけでワクワクする。

小説の合間に理系の本を読むのはとてもいい刺激。特に地学と生物が多いかな。堪えられません。

大量絶滅というと6600万年前の白亜紀末に起きた小惑星の衝突による恐竜絶滅が有名だけども、生物種の75%以上が消滅した大量絶滅は4.45億年前のオルドビス紀末、3.74億年前の後期デボン紀、ビッグファイブの中でも最高の、96パーセントの生物種が消えた2.52億年前のペルム紀末、など5回も起きている。筆者は2億150万年前、80パーセント絶滅の三畳紀末のものについて研究している学者さん。

三畳紀末のレーティアンと呼ばれる時期に起きた絶滅は、広範囲に分布し、個体数の多い分類群の絶滅の割合がほかのビッグファイブに比較して高い。陸生も海生も、希少種もそうでない種も一斉に絶滅している。レーティアンにはアンモナイトなどの大型だった生物が突如として小型化した後絶滅している。ちなみにレーティアンだけでも44万年あり、突如、と言っても数万年単位というスケールの大きい話。

話を戻して、この"突然小型化"はスモールワールドと呼ばれる。なぜ小さくなったのか?著者が大量絶滅のカギとしてこだわっている部分でもある。

天体衝突説もあったらしい。様々な調査、論文から湿潤化、富栄養化、無酸素化、二酸化炭素の消失、森林消失、などの出来事、要素を踏まえつつ全てが説明できる仮説を考えていく。主に露出した地層の調査をし、他者の有力論文を踏まえた展開でなかなか楽しい。

どうやらパンゲアが分裂するときの火成活動も大いに絡んでいるようだ。やっぱりビッグな話ではある。

特に温度、地球は高温化した時期もあった。氷河期の平均気温が現代と2度しか変わらなかった、とどこかで読んだことがある。考えると、平均で5度とか10度とか上がっている世界は恐ろしい。しかし宇宙規模で考えると、必ずしも珍しいことではないかもとも思える。

章ごとに漢字ふた文字、異変、混沌、犯人、指紋、連鎖、疑惑のタイトルが振られているのは興味をそそるナイスなアイディア。

私は子どもの頃毎年「天文年鑑」を買って読んでいた。分からない言葉や概念もたくさんあって、でもそんな専門用語を覚えたり、分からない、という感覚、好きなジャンルで分からない言葉に触れていることにワクワクした。

ただまあ今回は分からないというか、専門性に頭がついていかなかったのも確か。もう少し理解できればもっと楽しかったんでしょうかね。でも誰も知らない専門用語、ってゾクゾクするよね。

結論めいた推論は、弱点も多い、と自ら明らかにしている。まだまだ分からないことが多いのです。

おもしろかったのは海退による生息地の消失、海洋の酸性化、無酸素化などが複合的な影響を及ぼしたと考えられる説は「オリエント急行の殺人仮説」と呼ばれるそうでユーモラスな名付けに思わずニヤリと。

最新の本、とても楽しめた。

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