2022年10月11日火曜日

10月書評の4

CSの予定が消え、正直ややクサクサ気味😎だったしで何かないかと探したところ、県立劇団のシェイクスピアがあり、当日券で観てきました。行き当たりばったりけっこう好きです😆初ピッコロシアター。


シェイクスピアの有名どころは完読。しかし劇を観るのは初めてなのです。ドタバタ、笑い、そして最後はちょっとジンと来ました。お芝居は観ないんだけど、やっぱりライブはいいですね。演出でだいぶ変わるだろうなとは思いつつ、シェイクスピアは天才だなあと。


劇場喫茶でから騒ぎ特製サンドウィッチセット、これ何かの顔を模してる?と訊いたのですがそんなことはないとのこと。


山道に、小さなツリガネニンジンが咲きました。いつものとこに1か所のみ。今年も見つけられて良かった。あとザクロの赤い実が目を惹きました。きょうも朝晩寒くて昼は暑め。明日朝も寒くて、でも今週は暑いとか。それでも先週の土日は半袖短パンで外出してたことを考えれば季節は進んでます。


先週は同年代3人と飲み会。話すこと溜まりすぎてて、ドライブマイカー観た?とか、行ったとこ、人の消息、趣味の話に花が咲きました。コロナ前にゆるりと戻っていくのか、冬はどうなるのか、というとこ。また波は来るし、来ると警戒はするだろうしで、今のうち、ですね。。



◼️Authur  Conan  Doyle 

 The Adventure of the Three Gables

(三破風館)


さんはふかん、と読みます。私はこの作品で破風、というものを覚えました。


ホームズ原文読み25作め、第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿」から、本格的な捜査はない、ミニな物語です。発想が「赤毛組合」に似ているな、とも思えますが、どうもドタバタ風味が強い。彩りっぽい話ですね。


破風とは、三角の屋根の端のこちらに向いている細い部分、ですね。あまり詳しくは書いてませんが、事件のメインとなった建物の上の方に切妻屋根様の突起が3つ付いていたようです。


I DON'T think that any of my adventures with Mr. Sherlock Holmes opened quite so abruptly, or so dramatically, as that which I associate with The Three Gables.

「私がシャーロック・ホームズと共にした冒険のうちで、三破風館の事件ほどまったく唐突でドラマチックな始まり方をしたものはなかったのではないか」


冒頭、この文章で始まる事件は大きくガラの悪い黒人、ボクサーの脅しでスタートします。


派手なグレーのチェック柄スーツに身を包みサーモンピンクのネクタイというちょっと滑稽な恰好でずかずか入ってきて


you keep your hands out of other folks' business. Leave folks to manage their own affairs. Got that, Masser Holmes?

「他人のことにゃ口を出すな。人のことは人がしたいようにさせておきな、分かったか?ホームズさんよ」


続けろ、おもしろいから、と冷静にいなしたホームズに拳を突きつける用心棒的なチンピラ。


I've a friend that's interested out Harrow way

「ハーロウの件から手を引いて欲しいダチがいる」


he don't intend to have no buttin' in by you. 

「ヤツはお前に邪魔されたくない」


and if you come in I'll be on hand also. Don't you forget it.

「お前が出てくるようなら、俺も出てくるぜ。おぼえてろよ」


威勢のいいこと。ホームズが、プロボクサーのスティーブ・ディクシーと正体を見破り、別件の殺人に絡んでいることを匂わすと途端に卑屈になります。


So help me the Lord

「勘弁してくださいよ!」


自分に命じたのがバーニー・ストックデイルであることをあっさり漏らし、出ていきます。


いったいなんだ?と訝るワトスンに


I was going to tell you when we had this comic interlude. 

「それを話そうとしていたところにこの愉快なじゃまが入ったのさ」


interludeは、幕間劇、合間の出来事といった意味でした。読む時分からない単語は調べてメモしてます。メモが溜まる一方です😆


I have had a succession of strange incidents occur to me in connection with this house,

「この屋敷のことで、次々と奇妙な事件がわたしの身に起きていまして・・」


差出人はメアリ・メイベリー、住所はハロウ・フィールド 三破風館となっていました。ホームズとワトスン、スティーブ・ディクシーの出現が促進剤となったようにすぐ出かけます。


レンガと丸太造りの屋敷の外見はみすぼらしい印象、しかし家の中は立派にしつらえてあり、またメイベリー夫人は魅力的で教養のある女性でした。ホームズは彼女が、ダグラス・メイベリーの母ということと、ダグラスの死を知ります。肺炎とのことでした。


ダグラス・メイベリーについては、ロンドンじゅうの人間が知っている、情熱的で才能がある方、との言及があるだけで、何をしている人か、等の説明はありません。たぶん外交官で、詩なども書く文筆家で、社交界に出入りしているんだろうな、と想像するしかありません。


で、母メアリは本題を切り出します。3日前に不動産屋を名乗る男が訪ねてきて、


He said that this house would exactly suit a client of his, and that if I would part with it money would be no object.


この家は自分のクライアントの好みにぴったりで、もし手放す気があるなら、金に糸目はつけないと言うのです。


be no objectは問わない、問題としない、だそうです。日本人的には、まあ初めてのお客さんには過ぎた表現で、駆け引きとしてもよろしくないかも。逆に怪しいですね。


家具調度も一緒に買取りたい、という申し出にマーベリー夫人は他には空き家もたくさんあるのに、と不審を感じつつも、隠居して旅行にでも行きたいと考えていたこともあり、合意します。ふっかけて言ってみた金額を、相手はあっさり呑みました。なかなか夫人、やりますね。


ところが、契約文書を顧問の弁護士に見せてみるとー


Are you aware that if you sign it you could not legally take anything out of the house – not even your own private possessions?

「気付きましたか?もしこの契約書にサインしたら、法的には、たとえ私的な持ち物でさえも何一つ外に持ち出せなくなるんですよ」


その点を指摘すると、身の回りの品には譲歩してもいいかもしれないが、チェックしないで持ち出すことは出来ない、クライアントには独特の流儀がある、と。ミセス・マーベリーはこの話を断ります。


ここで、ホームズは立ち聞きしていた、メイドのスーザンを捕まえました。スパイだったんですね。夫人の書いた手紙はスーザンが投函しており、だからホームズの動きが察知され、スティーブが来た、というのが分かります。ホームズは黒幕を言え、と迫りますがー


I'll see you in hell first.

「あんたになんかにばらすもんか」

Oh, Susan! Language!

「まあ、スーザン、なんて言葉遣いなの!」


clear out、去ったスーザン。聞くに、特に家に貴重なものはない、とのこと。顧問の弁護士にできればひと晩かふた晩泊まってもらってはとアドバイスし、玄関へ向かう途中でダグラスのトランクやスーツケースを見かけます。中身を調べて明日また聞かせてください、と言い残し、ホームズたちは帰り、探偵は情報屋と接触します。


翌朝、三破風館に強盗が入ったと弁護士から電報が。ホームズとワトスンはすぐに向かいます。マーベリー夫人がクロロホルムを嗅がされて昏倒し、その間なにかと物色されたよう。しかし金目のものは取られていませんでした。夫人はホームズの忠告を聞かず、ガード役を呼ばなかったことを後悔していました。しかし、なんと気がついたときに強盗にしがみつき、彼らが手にしていた紙切れをちぎり取ったとのこと。


紙に書かれていたのは、恋愛小説の一部のようでした。結びは物騒でした。


Man must live for something. If it is not for your embrace, my lady, then it shall surely be for your undoing and my complete revenge.


「男には生きる目標が必要だ。そしてそれがあなたの抱擁ではないとしたら、愛しいひと、それは間違いなくあなたが破滅して私の復讐が遂げられることだ」


現場にはグレグソン警部も来ていて、単純な事件で、バーニー・ストックデイルの一味の仕業だろう、あの大きい黒人も目撃されている、と受け止めていました。ホームズはさっさと帰ります。


ホームズは得た情報から、相手はイザドラ・クラインだと目星をつけました。スペイン人、コンキスタドールの末裔の美女。老いた砂糖王と結婚、裕福な未亡人となり、社交界でアバンチュールを楽しみ、次は息子といってもいいような若い公爵と結婚する寸前でした。


お遊びの相手の1人がダグラスで、彼は夢中になってしまったわけでした。ホームズはイザドラに会いに出掛けます。鼻であしらおうとしたクラインに、では警察を呼びましょうか、と伝えてアラビアンナイトのような広々とした部屋へ通されます。イザドラの最初の態度はひどいものでした。


What is this intrusion – and this insulting message?

「厚かましく押しかけてきてなんなの?おまけにこの失礼な言い方は?」


彼女はしらを切りました。は?雇われた乱暴者?知らない、と。ホームズがwearilyうんざりして、ほんならスコットランドヤードに行くわ、と腰を上げたところでハッタリ負け。媚を売る表情に変わります。


You have the feelings of a gentleman. How quick a woman's instinct is to find it out. I will treat you as a friend.

「あなたには紳士の心持ちが感じられますわ。女の勘はすばやくそれを見抜くものですのよ。友人としておもてなししたいわ」


余談。昨年「女ことばと日本語」という本を読みました。明治初頭、一部のお嬢さん方の言葉遊びだった「てよだわ言葉」の流行・普及にひと役買ったのは本格化した翻訳で、男女を言い分け、女性らしさを出すのに最適だったから、という説明でした。まあこの豹変ぶりをもよく表してるかと思います。



悪党を雇った危険、いつ寝返るかもわからないことについては、ストックデイルとスーザンの夫婦しか自分のことを知らない、今回の件で逮捕されても自分の名前が出る気遣いはない。たっぷりお金を与えてあるから、と余裕あり。


Unless I bring you into it.

「私が名前を出さなければね」


No, no, you would not. You are a gentleman. It is a woman's secret.

「まあ、そんなことはなさらないでしょう。紳士でいらっしゃいますもの。これは女の秘密なの」


さらに原稿を返すべし、と言うと、暖炉にあったその燃えかすをpoker火かき棒で崩し、いたずらっぽく優雅に笑ってみせます。ワトスンは


I felt of all Holmes's criminals this was the one whom he would find it hardest to face.

「ホームズが相手にした全ての犯罪者の中でも最もやりにくいと思っているのではと感じた」


と描写しています。しかしホームズは


you have overdone it on this occasion.

「今回、あなたはやり過ぎた」


と冷たく言い放ちます。通用しないとわかり、さすがのイザベラもヒステリックに。でもことの顛末に関しては必死の弁明です。言葉も正直です。


あろうことかダグラスはただの火遊びを本気にして、結婚を真剣に求めてきた、


He wanted marriage – marriage, Mr. Holmes – with a penniless commoner.

「彼は結婚を求めてきました。結婚ですよ、ホームズさん、文無しの平民との!」


イザベラは自分が窓から見下ろしている所で、悪党どもにダグラスを殴らせました。すると彼は、仮名にはしてあるけどもバレバレの小説を書いて送りつけ、出版社に持ち込むと脅してきた、と。


ホームズもそりゃ彼の勝手でしょう、と言います。ただなかなか屈しない反面、ちょっとストーカーっ気も感じますね。ラブアフェアに狂った男です。若き富豪との結婚を控えたイザベラには痛くてしょうがなかったのですね。


まだ原稿が出版社に送られていないのを確かめたイザベラはダグラスの荷物ごと三破風館を買い取ろうとし、失敗したため強盗に及んだというわけでした。


I am sorry for it! – what else could I do with my whole future at stake?

「それは悪かったとは思っています!しかし私の将来が危うくなっているのに、他に何ができたでしょう?」


さて、事ここへ至って、要素は出尽くしました。強盗事件は警察が処理しているし、たとえイザベラの名前が出たとしてもホームズやマーベリー夫人には関係ない、自業自得です。一方ダグラスにも思い入れすぎな部分はあり、原稿ももはや存在しません。ホームズとしては最も利のある手段を取る気になったと思われます。



ミステリ的に言えば、ダグラスの死因に不審な目を向けてもいいかもですが、この喜劇的なドラマ、また殺人の重さを考えれば波及させないのが上策ですねやっぱり。


I suppose I shall have to compound a felony as usual. How much does it cost to go round the world in first-class style?

「いつものように重い罪を示談にしなければならないようだ。一等船室で世界一周するにはいくらかかりますかね?」


マーベリー夫人が隠居し旅行に行きたがっていた事を言ってるんですね。追い込まれていたイザベラはびっくりします。ホームズは5000ポンドの小切手を切ることを提案。そしたら自分が夫人に渡るよう取り計らう、うまく収めるといってるんですね。イザベラは12もなく同意するでしょう。最後に厳しく忠告します。


have a care! Have a care! You can't play with edged tools forever without cutting those dainty hands.

「注意なさい!鋭い刃物をいつまでも弄んでいると、いつかきれいな指に傷がつきますよ」


これで幕。です。


冒頭のバイオレンスの匂い、手荷物も含めて家ごと買い取りたい、という奇妙な取引依頼、押し込み強盗、黒幕の美女との直談判、ベースは華やかな社交界と、読み物としての魅力はまずまず。ただやはりホームズものは捜査の醍醐味と物語のしての活動性がないと物足りなく映りますね。


名作「赤毛組合」は質屋の主人を外出させておいて、その隙に店から銀行までトンネルを掘る、という話でした。探し物があるから住人を外出させる、というのは「株式仲買人」、それと愛すべき「三人ガリデブ」と、実はネタとして何度も使われているのです。手荷物まで含めて家買取ります、というのはまた豪勢な異質さ。その中に今回もまた、似たものを感じたのでした。


モヤモヤは残りますが、ホームズ物語中の彩りということで。






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