◼️ジェイムズ・ラヴグローヴ
「シャーロック・ホームズとシャドウェルの影」
人外のものと戦う俗っぽいホームズもの。
・・意外と好きだったりして。
なんてことないし気にしてないけども、10月の初書評が4日、は気がつけばあら遅いなと。というのが、バスケットのNBAジャパンゲームス、Bリーグ開幕、さらに高校のトップリーグの好カード、そしてバレーボールの女子世界選手権、そして白熱のパ・リーグ優勝争いとスポーツイベント多くて週末本読まなかったからですね。おまけに妻帰省で家事してたし。
さて、シャーロック・ホームズのパロディです。近代SFが生み育ててきたクトゥルー神の脅威とホームズたちが戦います。1880年、原作でホームズとワトスンが歴史的邂逅を果たす前年ですね。ホームズ26歳、年齢はシャーロッキアン団体、ベイカーストリートイレギュラーズが結論づけている生年に沿ってるようです。モリアーティも同年代。マイクロフトにグレグスンも登場します。
アフガニスタンで傷つき帰国したワトスンは場末の酒場で少女買春をしようとしていた病院時代の同僚、スタンフォードを見かけ、売り手の荒くれ男たちといさかいになります。そこへスタンフォードを追っていた若きホームズが割って入り、2人は出逢います。
ロンドンでは社会の底辺で暮らす者が急激に痩せ衰えて死ぬという不審死が相次いでおり、ホームズはキーマンと睨んだスタンフォードを追っていたのでした。ワトスンはホームズとアヘン窟へ入り込んで騒ぎとなり追い出されますが、ホームズの計算通り、暗黒街の黒幕グンフェン・シュウが接触してきます。グンフェン・シュウはこの世ならぬ世界の事を口にするのでしたー。
原作では、アフガニスタンで負傷した軍医ワトスンが部屋をシェアする相手を探していたところ、聖バーソロミュー病院同窓のスタンフォードに、実験途中のホームズを紹介される、という流れでした。品の良い印象のスタンフォードは、今回だいぶラリっています。
今作は、ホームズやモリアーティとの出逢い、それから「最後の事件」での対決とその結果、「空き家の冒険」での復活など、実はあれは事実と違って・・という部分が多い、たまに見かける手法になっています。
おどろおどろしさと現実離れした設定、息つく間もない大活劇の連続、というこちらもよくある展開。
ホームズのいわゆる贋作については、原作のテイストを重視し、名コンビが新たな事件を解決するもの、原作中で言及だけされている、いわゆる「語られざる事件」を物語化するものが1つのパターンです。
そして時代、登場人物など原作の縛り、くびきから解き放ち、現代に連れてきたり、歴史的偉人と会わせたり、さらには今作のように人外の者と戦わせたり、様々にホームズたちを活躍させるものがありますね。イメージとしては最近特にこちらの方が非常に多い。
古くは「シャーロック・ホームズの宇宙戦争」で侵略してきた火星人が出てきたり、ドラキュラにワトスンの奥さんがさらわれたり。ほか、原作に盛り込まれているホームズ物語らしさの活かし方もほんとに色々です。サイドの登場人物、モリアーティやレストレード警部やアイリーン・アドラー、ハドソン夫人を主人公とするもの、ライトノベル、マンガと溢れています。シャーロック・ホームズというギミックが世界に与えている影響は甚大です笑ホント。
これらについての受け止め方は人さまざまかと思います。私も当初はやっぱ正統派パスティーシュものに惹かれていました。いまも好きですけど。でもたくさん読むうちに、いまはパロディもなかなか面白いな、と思っています。
本書では地下迷宮や祭壇が出てきて、人喰いの化け物たちやもっと恐れるべき存在などとスリリングに対峙します。
だいぶ以前に観た映画「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」を思い出したりして。地下にピラミッドがある迷宮都市があって、その教えを信じるものは、白人もみな全員モヒカン辮髪のような髪型をしてて、エジプトで、モンゴル?と友人と言い合った記憶があります。やはり東方の神秘、というのは欧米の人にとって魅力なんでしょうかね。
熱のある力作で引き込まれることは確か。個人的にはいかにぶっとんだ設定であっても、そこにシャーロッキアン的風味をいかに入れていくか、が好みの面白みですね。これは3部作だそうで、次作はその点もう少しよろしくお願いしたい感じです。また、設定は今回1880年の15年後だそうで、「空き家の冒険」の翌年になります。
最近洋書は文庫本も高いんだけど・・また買っちゃうでしょう。楽しみに。
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